主時計(中枢時計)とは何か

主時計(中枢時計)とは、体内時計の基準となる時計であり、 光を主な同期信号(リセット信号)として機能します。

脳の視交叉上核(SCN)に位置し、「活動と休息」の切り替えといった体内の時間基準を司ります。
毎朝、光を受けることで、主時計は外界の昼夜周期に合わせて体内のリズムを24時間に調整(再同期)します。

主時計は「体の時間の基準」を作る

主時計の役割は、体の各機能に「今が何時相当か」という基準を与えることです。 その基準に合わせて、睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌などが時間に沿って切り替わりやすくなります。

重要なのは、主時計が「各臓器の働きを直接ひとつずつ操作する」よりも、まず全体の基準を作る点です。

主時計は光で調整され、地球の昼夜周期と再同期する

主時計は自律的にも動きますが、その周期は約24.1~24.3時間(個人差あり)と地球の自転より少し長いため、放っておくと外界の昼夜周期と少しずつずれていきます。 そこで朝の光が、主時計に「新しい一日が始まった」という情報を与え、主時計の基準が外界に合わせて保たれます。

主時計はNICTのセシウム原子時計のような「基準時計」、末梢時計は各臓器が持つ「腕時計」のようなものです。
腕時計はそれぞれ独立して動いていますが、基準時計と同期していることで同じ時間体系に属します。
そして、この同期が崩れ、主時計と末梢時計、または末梢時計同士の時間関係が一致しなくなった状態が、時間栄養学で扱う「ズレ(desynchrony)」の出発点となります。

末梢時計も存在し、同期していることが正常な状態である

体内時計は主時計だけで完結しているわけではありません。肝臓・筋肉・脂肪組織・腸などの各臓器には 末梢時計 が存在します。

体内時計は、主時計と末梢時計が同期しているときに、全体として正常に機能すると整理できます。 ここでのポイントは、主時計は光、末梢時計は主に食事などの代謝シグナルで調整される、という「同期因子の違い」です。

時間栄養学との関係

時間栄養学(chrononutrition)は、食事の内容だけでなく「いつ食べるか(食事の時刻や間隔)」が、 末梢時計や代謝に与える影響を扱う分野です。

主時計は光で、末梢時計は主に食事で調整されるため、食事タイミングは「ズレ(desynchrony)」の発生や調整に関係します。 全体像は 時間栄養学(chrononutrition)とは何か を参照してください。

参考文献

Takahashi JS. Transcriptional architecture of the mammalian circadian clock. Nature Reviews Genetics. 2017;18:164–179.

Mieda M et al. Cellular clocks in AVP neurons of the SCN are critical for interneuronal coupling regulating circadian behavior rhythm. Neuron. 2015;85(5):1103–1116.

Dallmann R. Circadian rhythms and metabolism. Current Opinion in Physiology. 2021;19:76–83.