一 令和6〜8年度 問4(古文)の一覧
本検査と追検査の6回分です。正答率は(ア)/(イ)/(ウ)/(エ)の順で、追検査は公表されません。赤字は5割を下回った設問です。
| 年度・検査 | 作品 | 正答率 | いちばん落としやすい箇所 | 解説 |
|---|---|---|---|---|
| 令和6年度 本検査 | 古事談鎌倉時代前期 | 56.9 / 39.5 / 41.8 / 45.1 | 「零涙」を悲しみと決めつける。行動の目的を取り違える。最後の認識変化を見落とす。後世の「武士らしさ」のイメージに引っ張られた可能性も考えられる(傾向として)。 | 問4の解説 |
| 令和6年度 追検査 | 新可笑記江戸時代前期(井原西鶴) | 公表なし | 近い選択肢の差を見落とす。「目撃」のように、本文にない出来事を一つ足しただけの選択肢が残る。 | 問4の解説 |
| 令和7年度 本検査 | 太平記南北朝時代 | 70.1 / 51.6 / 71.6 / 70.7 | (ア)で読んだ人物像を次の設問で使わず、語の一致で選ぶ。誰が誰に何のために贈るのかを取り違える。 | 問4の解説 |
| 令和7年度 追検査 | 武家義理物語江戸時代前期(井原西鶴) | 公表なし | 「しからば」が何を受けるかを見ず、発言者を決められない。省略された主語を一文ごとに固定してしまう。 | 問4の解説 |
| 令和8年度 本検査 | 宇治拾遺物語鎌倉時代前期 | 59.8 / 59.2 / 64.3 / 49.9 | 「あやし」の訳語に飛びつく。頭の中の映像が混ざり、本文にない「取り上げたむち」を補う。選択肢の一語のずれを見落とす。 | 問4の解説 |
| 令和8年度 追検査 | 感入録江戸時代と見られる(望遠鏡が登場) | 公表なし | 選択肢を分解せずに読む。分解すれば、本文と合わない要素が露骨に見える。 | 問4の解説 |
二 過去問を横断して見えてくること|取れる設計でも、実際には取れていない
記述がなく4択だけで、注釈も手厚く、文章も短い。神奈川の古文は、作りとしては取りやすい問題です。ただ、取れる設計であることと、実際に取れていることは別です。本検査の3回で、大問ごとの設問の単純平均を比べると、古文は3年とも文学的な文章と説明的な文章より低くなりました。
| 年度(本検査) | 文学的な文章(問二) | 説明的な文章(問三) | 古文(問四) |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 | 約77.1% | 約67.1% | 約45.8% |
| 令和7年度 | 約87.0% | 約69.6% | 約66.0% |
| 令和8年度 | 約73.0% | 約64.8% | 約58.3% |
設問ごとの正答率の単純平均で、配点の違いは考慮していません。追検査の正答率は公表されません。ここで見えてくるのは、難しさが「古文だから」だけで決まっているわけではないことです。文学的な文章でも、令和6年度(イ)の「戸惑い顔からはにかみ顔」のように、人物の感情や関係の機微を読む設問では44.0%まで下がります。明示された出来事を追う問題から、人物の意図・感情・関係を読み取る問題に変わると、正答率が下がりやすい。古文でも同じで、感情や人物像を一点に決めつけると外しやすくなります。
三 正答率が低い回の理由(傾向として)
令和8年度本検査
各設問とも選択肢の違いが微妙で、しかも近い内容が本文にも載っています。選択肢を丸ごと読むと、どれも本文に合って見えます。選択肢を「ちゃんと」要素に分け、一つずつ本文と比べなければ判定できない作りです。
令和6年度本検査
(イ)の「零涙」を悲しみと決めつける、(ウ)の武士の装いの意味を考える、といった設問で正答率が4割台でした。武士道は後の世に形作られた概念で、人物像も時代や立場でグラデーションがあります。「武士は泣かない」のような後世のイメージを本文に重ねると、本文どおりに読めなくなる可能性があります。
公表されているのは正答率までなので、どちらも原因は断定できません。こうした作りや読み方が得点差につながったと考えられる、という整理です。
四 6回に共通する取り方
1 選択肢を論点に分ける
いきなり正誤を判断せず、「誰が・何を・なぜ・どうした」に分けて、選択肢同士の違いを見つけます。
2 違いのある箇所だけ、本文の一句に戻す
本文全体を訳す必要はありません。違いが分かれば、確認する場所も分かります。
3 語の一致ではなく、関係の一致で判定する
本文と同じ語が入っていても、人物・行為・理由・結果の関係が入れ替わっていれば誤りです。感情語は一点の訳語に固定せず、前後の文脈で決めます。
落とし方は上の表のとおり回ごとに違いますが、どれも、この3つのどこかを省いた場合に起きています。一般的な考え方は古文の総論にまとめています。
五 古文単語は「知っておく程度」でよい
6回の作品は、鎌倉時代から江戸時代まで広がっています。言葉の意味は時代ごとにグラデーションがあり、古文単語を30語覚えれば足りる、とはいきません。これは、30語では不足しているという意味ではありません。文脈を理解せずに、古文単語と現代語訳を一対一で丸暗記しても、実際の文章を読むうえではほとんど意味をなさないということです。 同じ単語でも、時代や前後の文脈によって意味は少しずつ動きます。大切なのは、代表的な意味を知ったうえで、その場面ではどの意味で使われているのかを文章全体から判断することです。現代と意味が違う語があると知っておき、意味は前後の文脈で決めます。たとえば「あはれなり」は、「哀れ」と読むのか、「しみじみと趣がある」と読むのかは文脈次第です。令和8年度本検査の「あやし」も、訳語に飛びつくと外れました。注釈も手厚いので、語彙の暗記より、本文の記述を正確に読むことのほうが得点に直結します。
