令和7年度 共通選抜 本検査|神奈川県公立高校入試 国語

問4 古文|『太平記』

身分や損得ではなく「道理」。二つの話を通じて、青砥左衛門の判断軸を追う。

この年度のポイント
公表正答率は(ア)70.1%・(イ)51.6%・(ウ)71.6%・(エ)70.7%。(イ)では、贈り物を断った理由を、裁判の公平公正とつなげて読みます。
→ 神奈川県公立高校入試 古文の総論
先に人物の判断軸をつかむ。
最初の話は領地を巡る裁判、後の話は川に落とした銭の捜索です。出来事は違っても、青砥左衛門は一貫して、身分や自分の損得に流されず筋を通しています。
古文でも、選択肢を先に分解する

「誰が」「何を」「なぜ」を分け、選択肢の違う箇所を本文と照合します。表の太字は本文と合わない部分、緑色の行は正解です。
→ 動画で見る|選択肢をどう分析するか
→ 物語文(文学的な文章)の解き方

一 過去問解説

(ア)誰の味方かではなく、何を基準にしたか正答率 70.1%

他の者は徳宗領であることに遠慮し、公文を負けとしました。青砥左衛門は権門を恐れず、主張の道理を認めて相模守を負けとします。

他の者の判断理由青砥左衛門の判断理由
1相模守の勝ち公文の地位が低い相模守の負け公文の人柄の良さ
2相模守の勝ち徳宗領であることへの遠慮相模守の負け公文の主張の正当性
3相模守の勝ち気を遣う相模守の負け公文への同情
4相模守の勝ち公文が主張できない相模守の負け公文の立場を認めた
本文公文を負かした徳宗領に憚って相模守を負かした権門にも恐れず、理の当たるところを見て申し立てた
弱い側だから助けるのではなく、主張に道理があるから認める。
「人柄が良い」「かわいそう」「身分が低い」は、裁判の正当性とは別の話です。

答え 2

(イ)公平な裁判と、謝礼を断る理由をつなぐ正答率 51.6%

この年度で最も正答率が低い問題です。(ア)で確認した「身分にかかわらず道理に従う人」という人物像を、ここでも保持して読みます。

贈り主についての説明受け取らなかった理由
1公文からの贈り物不公平な判決をした事実が相模守に知られるのを恐れた
2相模守の悪評が広まったことを喜んで贈った公文を自己中心的で浅はかな人間だと思った
3領地を手に入れた公文敗訴して悲しい思いをした相模守に贈るべきだと思った
4勝訴した公文公平な裁判によって相模守の立場も保たれたので、公文が金銭を贈るのは道理に合わない
本文公文が恩を報いようとした「上の御悪名を申し留めぬれば、相模殿こそ喜びをばしたまふべけれ」「公文が引き出物をすべき様なし」

公平公正な判決が、結果として相模守も守った

青砥左衛門は、公文を助けようとして相模守を負けさせたのではありません。身分にかかわらず、公平公正に道理に従って裁いたのです。その結果、相模守に不利な判決になりましたが、同時に、相模守が道理に反して領地を得たという悪評を受けることも防ぎました。

公平公正に裁く → 相模守に不利な判決になる → 不当な利益を得たという悪名を防ぐ → 結果として相模守の立場も守られる。

本文の「沙汰の理非を申しつるは、相模殿を思ひ奉る故なり」は、その判決が相模守のためにもなったことを、公文に説明する言葉です。公文を勝たせたことへの個人的な恩返しとして、金銭を受け取る筋合いはありません。

③の「相模守に贈るべき」とは違う

「相模殿こそ喜びをばしたまふべけれ」は、悪名を負わずに済んだ相模守こそ、この判決を喜んでよいという意味です。敗訴した相模守がかわいそうだから、公文が相模守に金銭を贈るべきだ、と言っているのではありません。

③は「相模守」「贈り物」などの語が本文にあっても、誰が誰に、何のために贈るのかを取り違えています。語の一致だけで判断せず、関係をつなげます。

(ア)で分かったことを、(イ)でも使う

前の設問で読み取った人物像を捨てない
(ア)の答えから、青砥左衛門は「誰かに肩入れする人」ではなく、道理を判断の基準にする人だと分かります。(イ)でもその軸を使えば、不正を隠そうとする①、公文の人格を非難する②、敗訴者への同情に置き換える③のずれを見つけやすくなります。最後は本文と照合して④を確定します。

(ア)の正答率70.1%に対し、(イ)は51.6%です。人物像を読み取ることに加え、それを次の場面でも使い、判決の結果と謝礼を断る理由をつなぐことが、この問題の要点です。なお、正答率だけでは、どの誤答に多くの受験生が引かれたかまでは分かりません。

答え 4

(ウ)十文を探すために五十文を払う正答率 71.6%

ここでは、周囲の人が「小利大損」と笑った理由を答えます。青砥左衛門自身の反論と混ぜず、まず十文と五十文を比較します。

損になる理由
1松明の数が少なすぎるため、銭を探すのに大きな損になる
2十文で買えるはずの松明を五十文で買ったため、支払いが大きな損になる
3落とした金額より高い金を払って、落とした銭を探した
4店に対する迷惑の大きさを考えると、大きな損になる
本文「十文の銭を求めんとて、五十にて松明を買ふ」
十文を取り戻すために、五十文を使った。
落とした金額より捜索費用が大きいことが「小利大損」の理由です。十把は松明の数量であって、十文という価格ではありません。

答え 3

(エ)二つの話に共通する人物像をまとめる正答率 70.7%

前半では権力者への遠慮より道理を優先し、後半では自分だけの損得より世の中全体の利益を考えています。選択肢の人物評価だけでなく、具体的な出来事に余計な情報がないかを確認します。

内容の要点本文との照合
1権力者を恐れず、自分の損得にとらわれず筋を通す二つの話に共通する人物像と一致
2不利な立場の人物を大切にし、家来と一緒に銭を探す「銭を落とした家来」は本文にない。落としたのは青砥左衛門
3道理に合わない意見に反論し、諦めずに銭を探す「日中から夜にかけて」探し続けたのではない。夜に退出して銭を落とした
4広く思いやりがあり、自分と関わる人の利益を優先する「大多数が賛同した考えを受け入れた」は、権門を恐れず道理を述べた本文と合わない
自分の損は、商人の利益。銭を川底に残せば、世の中から失われる。
青砥左衛門は、松明代の五十文は商人の手元に残る一方、川に沈んだ十文は拾わなければ使えなくなると説明します。この理屈が、自分の利害だけにとらわれない人物像を支えます。

答え 1

二 この年度から分かること

設問が変わっても、本文の人物は同じです。
(ア)でつかんだ「道理を優先する」という判断軸は、(イ)の謝礼、(エ)の人物像にもつながります。前の設問で読み取った情報を、次の設問の判断材料として使います。
選択肢は、語の一致ではなく関係の一致で判定する。
誰が、誰に、何を、なぜしたのか。(イ)の③のように本文にある語を使っていても、因果や相手を入れ替えれば誤答になります。
教育の一環という見方を、人物像をつかむ補助にする。
高校入試は義務教育の締めくくりです。この文章では、公平公正に道理を通す人物が肯定的に描かれています。その筋を押さえると、場面ごとの読みがぶれにくくなります。ただし、善い行動に見えることだけで正解を決めず、本文に書かれた理由を確かめます。

三 まとめ

令和7年度の問4は、青砥左衛門の「道理を通す」という判断軸を、二つの話にわたって追う問題です。

とくに(イ)では、公平な裁判が結果として相模守の立場も守ったことと、公文から謝礼を受ける筋合いがないことをつなぎます。(ア)で分かった人物像を捨てず、選択肢の理由まで本文と照合する。これが、この年度の大切な読み方です。

AUTHOR

北川誠二

個別指導塾TOMAS講師・北川塾主宰・認定心理士

神奈川県公立高校入試の過去問を、正解だけではなく「なぜその選択肢を消せるのか」「何を見ればよいのか」という解く順番から分析しています。

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