令和7年度 共通選抜 追検査|神奈川県公立高校入試 国語

問4 古文|『武家義理物語』

「しからば」は誰の発言か。主語を一文ずつ固定せず、会話の流れと選択肢の差から読む。

この年度のポイント
『武家義理物語』(井原西鶴)は江戸時代の作品です。登場する石川丈山(1583~1672年)も江戸初期の人物で、語彙や語法には現代日本語との連続性がかなりあります。古文だからと一語ずつ機械的に訳すより、誰が何を言い、何をしたのかを日本語として追う方が読みやすい文章です。
→ 神奈川県公立高校入試 古文の総論
物語部分の選択肢分析は、物語文と同じ手法でよい

いきなり正誤を判断せず、まず「選択肢同士の違いは何か」を抜き出します。違いが見えれば、本文のどこを確認すればよいかも分かります。
→ 動画で見る|選択肢をどう分析するか
→ 物語文(文学的な文章)の解き方

一 過去問解説

(ア)「しからば」は誰の発言か

2と4はかなり近く見えます。違いは、食事を誰が持ちかけたのかです。

帰京について食事の約束その後
1引き留め・宿泊の申し出を断る次に京へ戻るとき二人で食事ただちに家を出る
2霜月末に備前から京へ帰る予定丈山の小屋で二人で食事すぐ旅立つ
3翌月末ごろ京へ帰れるはず丈山が小栗のために食事を作る早々に立ち去る
4丈山の問いに帰京時期を答える小栗が自ら一緒に食事をしようと申し出るすぐ出発する
本文「またいつ頃か京帰り」→「命あらば、霜月の末に」「しからば二十七日は我が心ざしの日なれば、ここにて一飯必ず」「と約束して、立ち行きぬ」
「しからば」=「それならば」。
直前の小栗の「霜月の末に京へ帰る」という返答を受けて、丈山が「それならば二十七日にここで食事を」と持ちかけた、と読むのが自然です。

「『……』と約束して、立ち行きぬ」だけを見ると、引用部も小栗の発言のように見えます。しかし、ここは「丈山が言う」→「二人は約束する」→「小栗は立ち去る」と主語が省略されながら移っていると考えれば自然です。古文では、一つの文の中でも主語を機械的に固定しないことが大切です。

答え 2

(イ)「待っていた」ではなく「追いかけた」

1と3は、どちらも丈山の見送りを小栗がありがたく感じた説明です。違いは、丈山が追いかけて来たのか、先に出て待っていたのかです。

丈山はどうした小栗はどう受け取った別れ方
1跡を追いかけて見送りに来た京の多くの友人の中でも思いやりのある人短く別れを告げて去る
2人に頼んで途中まで付き添わせた他の友人にはできないこと伝言を残して出発
3家を出て闇夜で待っていた京の友人の中でも特に思いやりがある短く別れを述べて出発
4跡を追いかけて見送りに来た京にいるただ一人の友人で思いやりが深い短く別れを述べて去る
本文「丈山その人の跡を慕ひて滑谷越に急がれし」「都に友もあまたなれど、心ざしはその方ならではあらじ」「立ちながら暇乞して別れぬ」
待っていたんじゃない。追いかけて来た。
「跡を慕ひて」があるので、1と3の差はここで決まります。また「都に友もあまたなれど」とあるので、「ただ一人の友人」とする4も消せます。

答え 1

(ウ)他を消して4を残す

小栗が約束の日に訪れた場面です。選択肢には、本文にない細部がかなり混ぜられています。

丈山の状態小栗の登場丈山の反応
1竹箒で家の中を掃いていた庭の外から声・寒そうな格好・暗い中を急いだ驚きつつ喜ぶ
2雪を掃いていた粗末な身なりで会うやいなや食事を求める旅の苦労を感じる
3竹箒で雪かき約束より早く着いた・薄着・優しい言葉をかけるたいそう喜ぶ
4家の近くで雪かき雪の降った翌朝早く、衣一枚の姿で現れ、約束について話す心を動かされる
本文「丈山竹箒を手づからに」「踏石の外面の笹戸」「明け渡る今」「破れ紙子一つ」「そなたは忘れ給ふか」後に「昔は武士のまことある心底」を感じる
少し気になるところ
小栗の「そなたは忘れ給ふか(忘れちゃったの?)」に対する丈山の直接の反応は、正解の選択肢にそのまま書かれていません。それでも1~3には本文と食い違う具体的な要素があるため、4を残せます。

選択肢は本文のすべてを説明している必要はありません。書いていないことと、本文と違うことは別です。

答え 4

(エ)最後の一文が主旨を言い切る

本文の最後は「昔は武士のまことある心底を感ぜられし」。何に感心した話なのかが、作者によってほぼ明示されています。

本文との違い・確認点
1丈山に出した手紙の内容どおり京へ来た、とするが、そのような手紙は本文にない。
2小栗が春まで京に滞在しようと言ったとするが、本文は「また春までは備前に居て」。
3食事の約束のため備前から京へ来て、食べ終えるとすぐ戻る。その姿に丈山が武士らしい約束を守る誠実さを感じた。
4西行に関する名所を丈山と一緒に見たいと言った、とするが本文にない。
本文「いつぞや仮初に申し交はせし言葉を違へず」「今朝の一飯食ふばかりに、はるばるの備前より京まで上られけるよ」「昔は武士のまことある心底を感ぜられし」
古文の最後の一文は、論説文の結論に近い。
エピソードを読み終えたあと、作者が「この話で何を言いたかったのか」を一言で示してくれることがあります。この問題では「約束を守る武士の誠実さ」がそのまま主旨です。

答え 3

二 この年度から分かること

古文でも、接続語は会話の流れを決める。
(ア)の「しからば」は、単なる古語知識ではなく「それならば」という日本語の接続です。直前の発言を受けて誰が話すのかを考えれば、食事を持ちかけた人物が見えてきます。
主語を一文ずつ無理に固定しない。
「と約束して、立ち行きぬ」は、〈二人が約束する〉→〈小栗が立ち去る〉と主語が移っていると読めます。主語が省略されるのは古文だけの特殊現象ではなく、日本語の性質です。
「選択肢は宝の地図」は古文でも同じ。
(イ)なら「追いかけた/待っていた」、(ウ)なら「約束より早い」「庭の外から声」など、選択肢の差が本文で確認すべき場所を教えてくれます。
最後の一文は、作者の評価を確認する。
物語部分を読み終えたあとに作者の感想・教訓が付くタイプでは、その一文が主旨の強い手掛かりになります。『武家義理物語』では「武士のまことある心底」が結論です。

三 まとめ

令和7年度追検査の問4は、古語を一語ずつ現代語に置き換えるより、会話の流れと人物の行動を日本語として追う方が解きやすい問題です。

特に(ア)は、「引用の直後に立ち去った人物=引用部の発言者」と機械的に決めると迷います。「しからば」が何を受けるのかを見れば、丈山の発言だと判断できます。

古文も日本語です。主語省略・接続語・人物関係・前後の行動を使って話の筋を復元し、選択肢の差を本文と照合します。

公式問題・正答

神奈川県教育委員会が公開している令和7年度追検査の問題・正答表です。
→ 令和7年度 共通選抜 学力検査問題(神奈川県)

AUTHOR

北川誠二

個別指導塾TOMAS講師・北川塾主宰・認定心理士

神奈川県公立高校入試の過去問を、正解だけではなく「なぜその選択肢を消せるのか」「何を見ればよいのか」という解く順番から分析しています。

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