令和6年度 共通選抜 追検査|神奈川県公立高校入試 国語

問4 古文|『新可笑記』

最後に作者の感想はない。最後まで「物語文」として、人物の発言・行動・因果関係を追う。

この年度のポイント
この文章は、末尾に作者の意見や感想を置くタイプではありません。最後の東方朔の話も、老人夫婦の出来事と同じ構造を持つ「もう一つの物語」です。したがって(ア)〜(エ)まで、基本は現代の物語文と同じ。人物が「何を見て」「どう考え」「何をしたか」を整理し、選択肢が本文にない情報を足していないかを確認します。
→ 神奈川県公立高校入試 古文の総論
最後の一文を「作者の主張」と決めつけない。
随筆では、長いエピソードの末尾に作者の感想・評言が置かれることがあります。しかし、この文章は違います。最後に置かれているのは「不死の薬酒」を飲んだ東方朔の故事であり、老人夫婦の話と対応する事例です。(エ)も作者の主張を選ぶ問題ではなく、二つの物語の共通構造を照合する問題として処理できます。
古文の物語部分は、物語文と同じ手法でよい

正誤をいきなり判断せず、まず選択肢を論点ごとに分けます。「何が起きたか」「誰がそう考えたか」「なぜその行動をしたか」を並べると、本文にない付け足しが見えやすくなります。
→ 物語文(文学的な文章)の解き方

一 過去問解説

(ア)近い選択肢ほど「付け足し」を探す

論点は、「宮人は供え物がなくなる理由をどう考えたか」と、「禰宜はそれをどう説明したか」の二つです。

「宮人」の供え物がなくなった理由「禰宜」の考え本文にない付け足し
1神の力によるもの見張りが不十分だったなし
2誰かのいたずら見張り不足を神が指摘した神の意図を追加
3誰かが食べている見張りを徹底しないと神罰がある神罰を追加
4神の力によるもの見張りが怠けていた禰宜が食べられる様子を目撃した
本文「奇瑞」「不思議な現象などではない」「各々御番の油断」禰宜は「思ふに」と推測している

1と4は非常に近い選択肢です。だからこそ、二つの差だけを探します。決定的なのは、4の「目撃」。本文の禰宜は「思ふに」と原因を推測しているのであって、供え物が食べられる場面を見たとは書かれていません。

もっともらしい補完に注意
「食べられるところを見たから、見張りの油断だと分かった」という流れは自然です。しかし、自然だから正しいのではありません。本文にない出来事を一つ足しただけで、その選択肢は誤りになります。
選択肢を丸ごと比較しない。 1と4のように大部分が同じなら、「どこだけ違うか」を探します。この問題では、その差が「目撃」です。

答え 1

(イ)「動じなかった理由」を老人自身の発言に戻す

老人夫婦は捕らえられても「あわてる様子がなかった」。そこで、選択肢がその理由をどう説明しているかを分けます。

状況・考え老人夫婦が動じなかった理由
1大勢の人が供え物を取り囲んでいるもう食べられないと諦め、捕縛にも抵抗しなかった
2証拠がない罰せられることはないと思い、焦らなかった
3供え物を食べて満足した捕まる覚悟を決めていたので、焦らなかった
4命を守る神なら、飢えた者を救うはずだと考える自分たちの行為は神の道理に反していないと思っていた
本文「命を守らせたまふ神ならずや」その理屈を述べたあと、酒を酌み交わして立ち帰る

1〜3は、「捕まっても動じなかった」という結果に、それらしい心理を後から付けています。しかし本文には、老人自身の論理がはっきり発言として書かれています。

心情を想像するより、発言を使う。
「命を守る神なのだから、命をつなぐために供え物を食べた自分たちを罰するはずがない」。この筋をそのまま拾っているのが4です。

答え 4

(ウ)主語と行動をそのまま照合

この問題は、主語と動作を分ければ処理できます。「誰が」「何をしたか」だけを確認します。

誰が何をしたか
1東方朔封印するのを忘れた
2官人封印を開いて飲んだ
3東方朔不死の薬酒を飲んだ
4官人東方朔をそそのかして飲ませた
本文東方朔「封を切りて、心のままに酌みし」

本文は、東方朔自身が封を切って酒を飲んだという話です。1は動作が違い、2・4は主語が違います。

古文で主語が省略されても、選択肢では主語が明示されます。 選択肢を先に分解すると、「誰の行動を確認すればよいか」が明確になります。

答え 3

(エ)作者の感想ではなく、二つの物語の構造対応

末尾だからといって「作者の主張」を探しません。老人夫婦の話と東方朔の話を並べ、何が対応しているかを見ます。

東方朔の話老人夫婦の話
1罰を受けても生きながらえた神の恩恵によって守られた
2「不死の薬酒」の徳を守るため、罰して命を奪わなかった「命を守る神」の威信を損なわないため、老人夫婦を許した
3薬酒の徳が消えてしまった神の恩恵を受けられなくなった
4許しを得られなかった老人夫婦は罰を受けた
本文殺せば「不死の薬酒」の徳が絶えるので、東方朔を許す罰すれば「命を守る神」の威力が薄くなるので、老人夫婦を帰す
老人夫婦東方朔
前提命を守る神不死の薬酒
罰すると老人の命を奪う東方朔の命を奪う
矛盾「命を守る神」と合わない「不死の薬酒」と合わない
結論老人夫婦を許す東方朔を許す

二つの話は、「看板どおりなら、ここで命を奪うわけにはいかない」という同じ構造です。したがって2が対応します。

末尾=作者の感想、ではない
この文章の末尾は「昔、唐土にもかかる例あり」と始まる別の故事です。作者の評言を一文で示しているのではなく、前の出来事と同型の例を重ねています。したがって(エ)も、最後まで物語文の解き方で処理できます。

答え 2

二 この年度から分かること

古文でも、「本文にない一要素」を足した選択肢は誤り。
(ア)の4は典型です。「禰宜が目撃した」とすると話は自然になりますが、本文にはありません。もっともらしい補完をしないことが重要です。
人物の心情は、まず発言・行動から取る。
(イ)では、「捕まっても平然としていた」から心理を想像する必要はありません。老人自身が「命を守らせたまふ神ならずや」と理由を語っています。書かれている根拠を優先します。
主語が分かれば、古文はかなり解ける。
(ウ)は「東方朔が」「封を切って」「飲んだ」と整理するだけです。単語の細かな訳より、誰が何をしたかを先に追います。
文章の末尾が、必ず作者の主張とは限らない。
随筆では最後に作者の感想が置かれることがありますが、令和6年度追検査は最後まで故事が続きます。(エ)は「作者の意見」ではなく、二つのエピソードの構造を対応させる問題です。
「選択肢は宝の地図」は、古文でも同じ。
選択肢を分解すれば、本文のどこを読めばよいかが決まります。全文を完璧に現代語訳するより、選択肢が作った論点に沿って必要箇所を確認する方が効率的です。

三 まとめ

令和6年度追検査の問4は、古文だから特別な知識で解くというより、人物の発言・行動・因果関係を整理して、選択肢と本文を照合する問題です。

(ア)は「目撃」という一語の付け足し、(イ)は老人自身の発言、(ウ)は主語と行動、(エ)は二つの物語の構造対応を見ることで処理できます。

最後に感想がなければ、最後まで物語として読む。 これも古文を「古文という別の教科」にせず、日本語の文章として読むための重要な見分け方です。

AUTHOR

北川誠二

個別指導塾TOMAS講師・北川塾主宰・認定心理士

神奈川県公立高校入試の過去問を、正解だけではなく「なぜその選択肢を消せるのか」「何を見ればよいのか」という解く順番から分析しています。

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