COLUMN

2026-06-09|北川誠二

本文なしで解く

自分で言うのもおこがましいが、国語の北川の名物解説。
知らざあ言って聞かせやしょう。


神奈川県の追検査問題は、カナロコでは掲載されない。著作権の関係で県のサイトでも本文が読めない。ならば、本文なしで解いてみせよう——これが北川式の名物解説である。

断っておくが、あてずっぽうではない。問題の構造を読んでいるだけである。出題者は、受験生に何かを問おうとしてこの問題を作った。その意図は、本文の外側——設問の配置、選択肢の構成、メモやまとめの入れ子構造——にすでに刻み込まれている。

国語のテストを解くとは、出題者が何を問おうとしているかを、構造から読み解くことである。

ただし、問題の種類が違えば、読むべき構造も違う。物語文と論述問題では、論理の骨格がまったく異なる。だからこそ、違うなりに考えなければならない。

一 物語文の構造

神奈川県の物語文では、設問が物語の起承転結に沿って配置される。これは偶然ではない。出題者が物語の流れに沿って問いを設計しているからだ。

選択肢を先に読むと、心情の着地点のバリエーションが事前にわかる。それだけでなく、物語の骨格そのものが見えた状態で本文に向かえる。

物語文の論理構造

設問配置:(ア)起 → (イ)承 → (ウ)転 → (エ)結 → (オ)総括

選択肢の役割:各場面における心情の着地点を示す「目盛り」である。「引きずっているのか」「揺らいでいるのか」「受け入れたのか」——このバリエーションを事前に把握することで、本文を読む際に「この人物はどの型に向かっているか」を意識できる。

結論:起承転結の構造が見えれば、本文は確認手段にすぎなくなる。

令和6・7・8年度本検査、令和8年度追検査——すべての年度で、この構造は一貫して確認されている。

物語文の解き方(詳細) → なぜ選択肢先読みなのか

二 論述問題の構造

論述問題の構造は、物語文とは根本的に異なる。ここで読むべきは起承転結ではなく、Kさんのメモ・まとめの入れ子構造である。

Kさんはメモを見ながらまとめを書いている。まとめは一段落目で文章1を小括し、二段落目で文章2を小括し、三段落目で総括する。つまり、メモの内容はすでにまとめの中に文章化されている。

論述問題の論理構造

入れ子の順序:メモ → 文章1の小括 → 文章2の小括 → 総括

出題者がしていること:まとめの中の言葉を空欄にして、問いとして提示している。

結論:まとめを読めば答えの地図が先に見える。本文は地図の精度を上げる補助にすぎない。

条件作文では、この構造から読み取った論旨を、指定語句と結びつけて再構成する。まとめの言葉をそのまま転記するのではなく、自分の言葉で組み立てることが求められる。

論述文の解き方(詳細)

三 二つの構造に共通すること

物語文

読む構造:設問の起承転結配置・選択肢の心情目盛り

本文の位置づけ:心情の確認手段

論述問題

読む構造:メモ→小括→総括の入れ子

本文の位置づけ:まとめの精度を上げる補助

構造は違う。問いの性質も違う。しかし、どちらにも共通することがある。

本文を読む前に、出題者の構造を読む。

出題者は問いを作るとき、必ず論理の骨格を設計している。その骨格は本文の外側——設問の配置、選択肢の構成、メモやまとめの構造——にすでに現れている。それを先に読む。これが北川式の正体である。

あてずっぽうではない。構造を読んでいるだけである。

著者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

著者プロフィール・教育理念 →