最終更新日:2026-06-03

神奈川県公立高校入試 国語 論述問題の解き方|本文より先に設問・メモ・まとめを読む

答えは本文の中にあるのではなく、設問・メモ・まとめの対応関係の中にある

神奈川県の論述問題は、本文を最初から最後まで読んでから解こうとしてはいけない。
設問・メモ・まとめの中に、出題者がすでに答えの構造を用意している。その対応関係を追うことが、論述問題を解くということである。→ 解き方の体系

解法の根拠と手順

出題者が本来測りたいのは、二つの文章から共通する考え方を抽出する力である。近年の神奈川県の論述問題は、令和6年度から令和8年度まで本検査・追検査を通じて、ほぼ共通した形式で出題されている。

  • 文章1と文章2が与えられる
  • Kさん(またはAさん)のメモが与えられ、文章1に対応するⅠ、文章2に対応するⅡの空欄を選択肢から選ばせる
  • Kさんのまとめが与えられ、文章1のまとめ、文章2のまとめ、二つの文章を統合した総まとめが示される
  • 総まとめと関連した論述問題が出題される

この形式は、メモは本文を圧縮したものであり、まとめはメモをもとに膨らませたものである。したがって、論述の答えはまとめの言い換えになる。出題者は指定語句と同じ意味を持つ表現をまとめの中に配置せざるを得ない。これは意図的な仕掛けではなく、この形式で出題する限り生じる必然である。

この構造から、次の手順が有効になる。

  • メモから中心概念を把握する
  • まとめの中で、その概念がどのように表現されているかを見る
  • 指定語句との対応関係を整理する
  • そのうえで文章化する

採点条件の確認

神奈川県が採点上の注意として発表している。

  • 与えられた条件をすべて満たし、問題の主旨に即した文は六点。そこから減点となる
  • 誤字脱字は、一個以上はすべて二点減点
  • 許容できる範囲の主旨からのすれているもの、意味がとりにくいものは、二点減点。その判断は学校ごと
  • 結果として、得点は、零点、二点、四点、六店となる

四 令和8年度追検査 問5 を例に解き方考える

令和8年度追検査問5を例に考えてみよう。追検査はカナロコでの本文公開がなく、著作権の関係で神奈川県のサイトでは本文を確認することができない。しかし、圧縮構造が成立している以上、設問・メモ・まとめの対応関係を追うだけで答えの構造がほぼ確定する。

なお、北川塾では北川式論述解析シートを用い、以下の解答作成過程を修練し、4分以内の解答を目指す。

五 (ア)の解き方:メモとまとめの対応関係を追う

まず、KさんのメモとKさんのまとめを読む。

Kさんのメモを見ると、二つのまとまりがある。

Kさんのメモ(二つのまとまり)

一つ目:「部分から全体へ認知する時、部分にとどまらない」

二つ目:「明示的に認識されない領域」

年度によって、対比構造であったり、並立構造であったりするが、当該年度は、前半が具体例、後半がその説明である。つまり、「具体例→定義」の構造になっている。

対比ではなく「具体例→定義」の構造

対比構造であれば「これはこうだが、こちらはこうだ」という対応関係が見えるため、むしろ選びやすい。しかし今回は、具体例から概念を説明する構造になっている。この見極めが選択肢を絞る鍵になる。

次に、Kさんのまとめの一段落目を見る。そこには「大まかなものとしてそのまま認識できる」と書かれている。

この時点で選択肢1と4は消える。大まかなものとして認識していることと、認識が揺らいでいることは違う。また、部分的な特徴を明確にするという話でもない。

残るのは2と3である。ここで文章2に対応するメモを見る。そこには「人知を越えた存在」「何を意味するか分からない概念を用いて思考を続ける」とある。

すると、選択肢2の「考えることができない」は当たらない。意味が完全に決まっていなくても、概念として持ち続け、思考を続けているからである。

(ア)の正解

「定義を一つに定めることはできないが、概念として持ち続けることができる」を表す3が正解。

(ア)が問うていること

内容理解ではなく、メモ→まとめ→選択肢の対応関係を追う問題。本文がなくても解ける。

受験生にとっての(ア)の意義

(ア)を解くことで、(イ)の作文に必要な材料がほぼ揃う。選択肢の構造が、作文の骨格になる。

六 (イ)の解き方:材料を集め、指定語句と接続する

(ア)が終わると、すでに作文に必要な材料はかなり集まっている。

メモから抽出できる材料

・明示的に認識されない領域が、直観や不意の確証の源泉である

・意味の分からない概念を用いて思考を続ける

まとめから抽出できる材料

・大まかなものとしてそのまま認識できる

・意味を一つに定めずに思考を続けることができる

どちらも短いので、材料集めに時間はかからない。次に設問を見る。

  • 設問:「はっきりと捉えていないものについて」→「大まかなものとしてそのまま認識できる」につながる(別解釈の余地なし)
  • 設問:「はっきりと一つに定まっていないものについて」→「意味を一つに定めずに思考を続ける」につながる(こちらもほぼ確定)

あとは指定語句を使って文章を作るだけである。

指定語句「暗黙」の使い方

大まかなものとして捉えようと意識しているわけではなく、自然に認識している状態を表す。「暗黙のうちに概要を概要として認識し」という形で使う。

指定語句「決定」の使い方

設問に「一つに定まっていない」と書かれている以上、「一意に決定しない」「意味を決定しないまま」とつなげればよい。こちらは比較的使いやすい。

解答例

暗黙のうちに概要を概要として認識し、一意に意味を決定することなく思考を続けられる。

七 まとめ:論述問題の解法と所感

論述問題で問われているのは、作文の上手さではない。設問・メモ・まとめの対応関係を追い、骨格を確定させてから書く。それだけである。

ステップ1 設問を見る

指定語句と問いの構造を確認する。「はっきりと〜」などのキーワードを拾う。

ステップ2 メモを見る

二つのまとまりの関係(対比か、具体例→定義か)を見極める。

ステップ3 まとめを見る

指定語句に対応する言い換え表現を探す。ここに答えの言葉がある。

ステップ4 対応関係を確定する

設問・メモ・まとめ・選択肢の間の言い換えを対応させ、骨格を固める。

ステップ5 指定語句を接続する

確定した骨格に指定語句を自然な形で組み込み、文章を作る。

本文は最後の確認に

骨格が確定した後、必要であれば本文の該当箇所を確認する。全文精読は不要。

私は、いつもながらK君のまとめ上手に感心する。
私はこの解き方を勧めているが、 普段の学習で本文を読まなくてよいと言っているわけではない。
むしろ本文を深く読み、 自分でメモを作り、 自分でまとめを書く経験があるからこそ、 試験本番で出題者が作ったメモやまとめの構造が見えるようになる。
この試験問題が求める技能は社会に出てかなり役に立つと思う。
ここに書かれているのは受験テクニックであり、 中学生の諸君には、本格受験体制に入る前は、 是非このようなまとめを作る練習を重ねてもらいたい。

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