植物発酵液の製法の違い|抽出方法・発酵菌の管理の仕方・最終工程で考える

酵素ドリンクとひとくくりに呼ばれていても、実際の製法はメーカーによって大きく異なります。

植物発酵液の製法の違いは、大きく「抽出方法」「発酵菌の管理の仕方」「最終工程」という3つの軸で整理できます。同じ「発酵・熟成型」に分類される製品同士でも、この3軸で見ると設計思想がまったく異なることがあります。

このページでは、酵素ドリンクを「酵素そのものを補給する飲み物」としてではなく、植物原料を発酵させた植物発酵飲料として捉えたうえで、その製法をどう見分けるかを整理します。酵素ドリンクとは何かについては、酵素ドリンクとは|「酵素」ではなく植物発酵で考えるで詳しく解説しています。

1. 植物発酵液は「酵素ドリンク」と一括りにできない

酵素ドリンクは一般に、「発酵・熟成型」「非加熱抽出型」「ペースト型」のように大まかに分類されることがあります。しかし、この大分類だけでは製法の実態を捉えきれません。

たとえば同じ「発酵・熟成型」に分類される製品でも、生の野菜や果物に砂糖をまぶして常在菌に発酵をゆだねる方法と、植物原料を煮出して抽出したうえで酵母によるアルコール発酵を経由させる方法とでは、工程の設計が異なります。工程が異なれば、抽出される成分や発酵過程で生じる成分の傾向も変わってきます。

製法の違いを正しく見るには、大分類のさらに内側にある「抽出方法」「発酵菌の管理の仕方」「最終工程」という3つの軸で見ていく必要があります。

2. 抽出方法の違い

植物原料からどのように成分を引き出すかという、最初の工程の違いです。

浸透圧抽出

生の野菜や果物に砂糖をまぶし、浸透圧によって水分とともに成分を引き出す方法です。家庭でも行われる、もっとも一般的な抽出方法です。

煮出し抽出

植物原料を一定時間煮出して成分を抽出する方法です。根・茎・乾燥植物など、そのままでは成分が出にくい植物原料からも、加熱によって成分を引き出しやすい方法です。

浸透圧抽出は生の原料が持つフレッシュさを活かしやすい一方、煮出し抽出は根・茎・乾燥植物などを扱いやすい方法です。どちらの抽出方法を採っているかによって、使える原料の幅や、その後の発酵工程の設計も変わってきます。

大鍋で植物原料を1時間以上かけて煮出す抽出工程
植物原料を大鍋で1時間以上かけて煮出す、煮出し抽出の工程。

3. 発酵菌の管理の仕方の違い

抽出したエキスをどのように発酵させるか、発酵菌をどこまで管理するかという違いです。

常在菌任せの自然発酵

原料に付着している常在菌や乳酸菌にゆだねて発酵させる方法です。原料そのものが持つ菌の力を活かします。

酵母を用いた制御発酵

酵母を加えてアルコール発酵を経由させるなど、発酵の種類や進み方を管理する方法です。品質の再現性を保ちやすいという特徴があります。

常在菌任せの発酵は、原料や季節によって発酵の状態が変わりやすい面があります。一方、酵母を用いた制御発酵は、雑菌の繁殖を抑えながら発酵を計画的に進められるため、大量生産や品質の安定を重視する製造に向いています。

常在菌任せの自然発酵は、「自然にゆだねている」という点で好意的に捉えられがちですが、発酵・醸造の実務では、選抜酵母(遺伝子操作ではなく、発酵に適した性質を持つ株を選び出して純粋培養した酵母)を用いて発酵を管理する方が、狙った品質を安定して実現しやすいというのが基本的な考え方です。ワインの醸造でも、天然酵母にゆだねる自然派ワインは一定の支持を集めていますが、品質の安定性という点では選抜酵母を使う方が主流です。柿酢などの酢酸発酵でも、選抜酵母と、あらかじめ酢酸発酵が完成した種酢を使うことが、安定した品質を担保する標準的な方法です。

発酵とは、ただ時間を置くことではなく、微生物の働きを理解し、目的に合わせて設計する工程です。

4. 最終工程の違い

発酵を終えたあと、どのように仕上げるかという工程の違いです。

そのまま熟成

発酵を終えた原液を、そのまま一定期間熟成させて仕上げる方法です。

アルコール除去を伴う熟成

酵母によるアルコール発酵を経由させたあと、アルコールを取り除いてから熟成させる方法です。

アルコール除去を伴う熟成は、発酵を酵母の力で安定的に進めながら、最終製品はノンアルコールの植物発酵液に仕上げるための工程です。発酵時に生じた有機酸やアミノ酸などの成分は残しつつ、アルコール分だけを取り除きます。

熟成に求められる役割は、抽出方法と発酵菌の管理の仕方によって変わります。浸透圧抽出では、生の原料を糖に漬け込み、原料や環境に由来する微生物の働きも含めて、時間をかけながら発酵・熟成を進める設計があります。一方、煮出し抽出では、加熱によって植物原料から成分を引き出したうえで発酵工程に入ります。そこに選抜酵母による発酵を組み合わせる場合、抽出と発酵の段階で工程を管理しやすくなるため、熟成に求められる役割も変わってきます。

つまり、熟成期間の長さは、それ単体で良し悪しを判断できるものではありません。抽出方法と発酵菌の管理の仕方という前段階の設計によって、必要な熟成期間は変わります。酵素ドリンクは「長期熟成(3年程度)であるほど良い」と言われることがありますが、それは数ある製法の中の一つを前提にした見方にすぎません。

この工程で分離されたアルコールは、廃棄されるだけでなく、別の製品の原料として活用されることがあります。次章で、その実例を紹介します。

5. 越後薬草の植物発酵液はどこに位置づけられるか

越後薬草の植物発酵液は、この3軸で見ると次のように位置づけられます。

越後薬草の製法
抽出方法煮出し抽出
発酵菌の管理の仕方酵母を用いた制御発酵(アルコール発酵を経由)
最終工程アルコール除去を伴う熟成

越後薬草の植物発酵液は、植物原料を煮出して抽出したエキスに糖を補い、選抜酵母によるアルコール発酵を行ったのち、アルコールを除去して熟成させることで、有機酸・アミノ酸・低分子成分などを含む植物発酵液に仕上げています。

含有成分の詳細については、植物発酵液のメタボローム解析結果をもとに、成分一覧ページで整理しています。

この製法を裏付ける実例があります。発酵の過程で分離したアルコールは、越後薬草蒸留所で80種類の植物を用いたジン「THE HERBALIST YASO GIN」の原料として、実際に製品化されています。植物発酵液とジンは、同じ製造ラインから生まれています。

THE HERBALIST YASO GINや植物発酵液に使われる乾燥植物原料
煮出し抽出に使われる、多種類の乾燥植物原料。
越後薬草蒸留所のTHE HERBALIST YASO GIN。80種類の植物由来
THE HERBALIST YASO GIN(越後薬草蒸留所)。植物発酵液と同じ製造ラインで分離されたアルコールを原料としている。

丸景の「柿酢×酵素」は、この越後薬草の植物発酵液を87%、国産柿を原料とする柿酢を13%の割合で組み合わせた植物発酵飲料です。煮出し抽出と酵母による制御発酵、アルコール除去を伴う熟成という、管理された製法を経た植物発酵液が原料になっています。

6. 製法を見ることが、酵素ドリンク選びにつながる

製法の違いは、成分だけでなく味わいにも関係します。抽出方法、発酵菌の管理の仕方、最終工程が異なれば、発酵の進み方や仕上がりの風味も変わります。

「甘すぎない」「毎日続けやすい」といった味の感じ方の違いは、原材料表示や糖の種類だけでなく、こうした製法の設計にも関係しています。酵素ドリンクを選ぶときの4つの基準については、酵素ドリンクの選び方|4つの基準で考えるで詳しく解説しています。

7. よくある質問

Q. 酵素ドリンクの製法はすべて同じですか?

いいえ。酵素ドリンクという名称は多様な製法をひとまとめにした呼び方であり、抽出方法、発酵菌の管理の仕方、最終工程はメーカーによって大きく異なります。同じ「発酵・熟成型」に分類される製品同士でも、工程の設計は別物であることが少なくありません。

Q. 浸透圧抽出と煮出し抽出はどう違いますか?

浸透圧抽出は、生の野菜や果物に砂糖をまぶし、浸透圧によって水分とともに成分を引き出す方法です。煮出し抽出は、植物原料を一定時間煮出して成分を抽出する方法で、根・茎・乾燥植物など、そのままでは成分が出にくい植物原料からも、加熱によって成分を引き出しやすいという違いがあります。

Q. 発酵菌の管理の仕方に違いがあるのはなぜですか?

植物や空気中に付着している常在菌にゆだねる自然発酵と、酵母などを用いて発酵の種類や進み方をコントロールする方法とでは、再現性や安定性に違いが出ます。どちらが優れているというより、どのように発酵を管理しているかという設計思想の違いです。

Q. なぜ一度アルコール発酵させてからアルコールを除去するのですか?

酵母によるアルコール発酵を経由させることで雑菌の繁殖を抑えたうえで発酵を進め、その後アルコールを取り除いてから熟成させる方法があります。これは、発酵を安定的に管理しながら、最終的にノンアルコールの植物発酵液に仕上げるための工程設計です。

Q. 熟成期間が長いほど、良い酵素ドリンクといえますか?

熟成期間の長さだけで判断することはできません。浸透圧抽出と常在菌任せの自然発酵では、原料の分解や発酵の進み方を時間をかけて自然に落ち着かせる必要があるため、熟成期間が重要な役割を持ちます。一方、煮出し抽出と選抜酵母による発酵を組み合わせた製法では、原料の分解と発酵の管理があらかじめ進んでいるため、熟成に求められる役割は変わります。

Q. 丸景の植物発酵液は、砂糖で植物を漬け込むタイプですか?

いいえ。丸景の柿酢×酵素に使われている越後薬草の植物発酵液は、植物原料を砂糖に漬け込んで浸透圧で抽出するタイプではありません。植物原料を煮出して抽出液を作り、その抽出液に糖を補ったうえで、選抜酵母によるアルコール発酵を経由させます。その後、アルコールを除去し、熟成させる製法です。

Q. 越後薬草の植物発酵液からジンが作られているというのは本当ですか?

本当です。越後薬草蒸留所では、植物発酵液の製造過程で分離したアルコールを原料に、80種類の植物を使ったジン「THE HERBALIST YASO GIN」を製造しています。同じ製造ラインから、飲料用の植物発酵液とジンの両方が生まれています。

Q. 丸景の柿酢×酵素にはどの植物発酵液が使われていますか?

丸景の柿酢×酵素は、越後薬草の植物発酵液を87%、国産柿を原料とする柿酢を13%の割合で組み合わせた植物発酵飲料です。

執筆・参考情報

執筆・編集:北川誠二

運営:株式会社丸景

資料提供:株式会社越後薬草

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