令和8年度 共通選抜 本検査|神奈川県公立高校入試 国語

問5 複数文章|メモ・まとめ・記述

メモの対比から即断する。指定語句で答案の骨格を作り、まとめの表現で字数を整える。

問5に4分を残す。
(ア)を短時間で決め、(イ)は条件を満たす答案を書く。10点満点のうち6~8点を狙うための時間配分です。完全な答案に迷って空欄にするより、まず部分点を狙える一文を作ります。
公表正答率:(ア)53.1%、(イ)21.0%。
正答率が低くても、手を付けにくい問題とは限りません。(ア)は対比を見抜けば短時間で判断でき、(イ)は指定語句とまとめを使って答案を作れます。上の得点は学習上の目標であり、個々の答案の点数を保証するものではありません。
文章・設問はカナロコ掲載の問題PDFを参照してください。
令和8年度 神奈川県公立高校入試 国語 問題PDF(カナロコ)
問5は問題冊子の13~14ページです。

一 メモとまとめの構造を確認する

以前は、説明を読んで討論する形式がよく見られましたが、今回は「二つの文章→メモ→まとめ」という構成です。まず、すでに整理されている情報を使います。

資料役割
文章1・文章2考えのもとになる文章。
メモ文章1・文章2それぞれのエッセンス。丸印ごとの対比に注目する。
まとめ・第1段落文章1のまとめ。自分の枠に収まらない表現を求める。
まとめ・第2段落文章2のまとめ。見える部分だけでなく、見えない部分まで真似る。
まとめ・最終段落二つの考えを合わせた総合まとめ。ここに字数制限付きの記述を入れる。
この問題は、メモとまとめから解答を組み立てられます。
まずまとめから言いたいことを決める。字数が合わなければ、本文から使える表現を借りる。この順番で進めれば、本文を最初から読み直す必要はありません。

二 指定語句から記述の骨格を先に作る

(イ)の指定語句は「枠」「表面的」です。まず、この二語を使ってどんなことを言うのか、まとめから探します。

枠にとらわれず、表面的なものだけでなく内面も○○する。

指定語句と設問から、こうした方向を予想できます。○○に入るのは、文章2のまとめにある「真似る」です。予想した骨格をまとめと照合すれば、まず書くべき内容が見えます。ここでは字数を整える前に、二つの文章に対応する要素を確保します。

三 (ア)丸印ごとの対比を読む

(ア)メモの空欄Ⅰ・Ⅱ正答率 53.1%

Ⅰ:それまでの音楽と、新しく聴く音楽の対比

文章1のメモは、「中学生になるまで聴いてきた音楽」と「クラシックや海外の比較的マイナーな音楽」を対比しています。Ⅰには後者を表す説明が入ります。

選択肢Ⅰに入る内容判断
1中学生になるまで聴いてきたもの対比の前半と同じなので合わない。
2友だちがあまり聴かないもの本文にも出てくる情報だが、ここでの論点は自分にとっての音楽。他者が聴くかどうかではない。
3当時の自分の好みに合わないもの好みに合わないという論点ではなく、既に聴いていた音楽の枠を広げること。
4当時の自分にとって未知のものそれまで聴いてきた音楽との対比になり、まとめとも一致する。

Ⅱ:「自己流で」の対比を補う

「自己流」は一般には「他者に師事せず」という意味にも取れます。しかし、ここでは次の丸印の「一流の作品を真似ようとする」と対比されています。したがって、「一流の作品を真似することをせず、自己流で」と補って読むことが重要です。

選択肢Ⅱに入る内容判断
1安易な方法だから簡単にできた気持ちになり第一段落だけなら成り立ちそうにも見える。ただし、表面だけ真似る場合にも「簡単にできた気」になり得るため、自己流と真似ることの対比としては弱い。Ⅱだけで無理に否定せず、Ⅰが対比に合わないことから、この組み合わせを除外する。
2自分の心を守れずに絶望してしまい自己流なら、一流との違いを観察せずに済み、自分の心を守れるという対比なので、内容が逆になる。
3自分と一流の差がすぐに埋まってしまい自己流で一流との差がすぐ埋まる、という内容は合わない。
4自分と一流の違いを観察せずに済み違いを観察せず、自分のできなさに向き合うことを避けられる。そのため自分の心を守れる、という対比に合う。
「真似る」の意味の広がりに注意する。
最初の段落では「真似る」と「自己流」が対比されていますが、後段では「表面だけ真似る」と「形として見えないものまで真似る」に分かれます。文章全体の趣旨に沿えば、ここで自己流と対比したいのは、見えない部分まで真似て自分のできなさに向き合う取り組みです。ただし、最初の段落でその区別が明示されているわけではなく、後段を踏まえて意味を補う必要があります。そのため、Ⅱの1を単独で明確な誤りと断定するのは難しいところです。
議論の余地があるところは、もう一方との組み合わせで判断する。
選択肢1は、Ⅱを無理に否定しなくても、Ⅰが対比に合わないので除外できます。一方、選択肢4はⅠ・Ⅱともに対比と整合します。確実に判断できる箇所を使って、組み合わせ全体の正誤を決めます。
時間がなければ、4の組み合わせの辻褄を確認する。
Ⅰは「未知のもの」、Ⅱは「違いを観察せずに済む」。どちらも対比とまとめに合います。Ⅰで4が有力になったら、Ⅱの4が矛盾しないかを確認して決めます。

答え 4

四 (イ)まとめの表現で30~40字に整える

(イ)指定語句を使った記述正答率 21.0%

条件は、30字以上40字以内、「枠」「表面的」を両方そのまま使うこと、文章1と文章2の内容に触れること、前後につながる一文にすることです。

解答例(37字)
枠に収まらない表現を求め、表面的な部分だけで満足せず見えない部分まで真似る
答案の部分対応する内容
枠に収まらない表現を求め文章1:自分が既に関心を持つ表現の外へ広げる。
表面的な部分だけで満足せず見えない部分まで真似る文章2:見える形だけでなく、その裏にある思想などまで真似る。

この答案を空欄に入れると、「作品制作において自身の表現の幅を広げるには、〔解答例〕ことが大切だと言える。」とつながります。

今回は本文に戻るまでもありません。「収まらない表現を求め」「満足せず」は、まとめから借りた言い方です。「枠」「表面的」という指定語句を組み込み、二つの文章の内容を37字に収めています。

まずまとめから言いたいことを決める。字数が合わなければ、本文から使える表現を借りる。
書く内容は、まとめの二つの要点から決めます。その言葉で字数に収まれば、本文に戻る必要はありません。収まらないときは、本文の「具体の裏にある」のような表現も借り、前後につながる形へ整えます。
コメント:まとめを書くときの考える順序
実際にまとめを書く場面を考えると、いったん自分の言葉に直した内容を、結論で元の表現に戻すことには違和感があります。第2段落で「具体の裏にある」と書き、最終段落でそれを自分の言葉に直すのであれば理解できます。しかし、今回は第2段落ですでに「形として見える部分にとどまらないところ」と整理されています。その言葉から結論を書けばよく、本文の表現へ戻すことが必須とは考えにくいでしょう。本文から表現を借りるのは、書く内容を決めた後、字数を整えるための工夫です。
時間が少なくても、骨格だけは書く。
「枠にとらわれず、表面的な部分だけでなく内面も真似る」といった骨格を作り、指定語句・字数・二つの文章への対応を確認します。どこまで部分点が付くかは採点基準によりますが、条件と趣旨に合う答案を残すことが得点につながります。

五 試験での進め方

  1. 問5に4分を残す。
  2. 記述の指定語句を見て、まとめから書く方向をつかむ。
  3. (ア)はメモの対比を使って4を確認する。
  4. (イ)はまずまとめから言いたいことを決める。字数が合わなければ、本文から使える表現を借り、30~40字に整える。
  5. 指定語句・字数・前後のつながりを確認する。

AUTHOR

北川誠二

個別指導塾TOMAS講師・北川塾主宰・認定心理士

神奈川県公立高校入試の過去問を、正解だけではなく「なぜその選択肢を消せるのか」「何を見ればよいのか」という解く順番から分析しています。

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