論説文は筆者の主張を追う読み物である。選択肢の正誤は本文の主旨に照らして判断する。理解できない箇所に執着せず、筆者が最終的に何を言いたいのかを優先して整理することが重要になる。
令和8年度 共通選抜 本検査|神奈川県立高校入試 国語
問3 論説文読解|主旨を掴み、消去法で仕留める
人間の知能は身体に埋め込まれているからこそAIとは異なる。その身体ははかなく、だからこそAIの知とは違う価値がある。
一 過去問解説
AとBに同じ語がないので、どちらかを当てればよい。より確実な方を選ぶ。
3が正解。
出題者の意図として、どちらかが分かれば正解にするという配慮がある問題。Aは要約ではなく前半が理由。BはBに入る語がいいのだとあてはめて確認するとわかりやすい。
答え 3
本文中の「と」の用法を識別する。
- 1.共同連帯
- 2.順接・因果
- 3.副詞化の助詞
- 4.並列
1が正解。
本文は共同連帯なので1。1と4の区別は英訳で考えるとわかりやすい。withは「と」、andは並列。「私は彼と学校に行く」はI go to school with him.で私が中心。「私と彼は学校に行く」はHe and I go to school.で並列。現実の場面は似ていても文の構造は異なる。
答え 1
言葉の意味の問題。
2が正解。
選択肢の対義語を考えることで、その選択肢が問題の語と対義語の関係にあるかを逆から確認できる。学習はむしろ類義語の方向で考えるとよい。かなり思い切った意見だが、学習とは模倣の積み重ねとも言える。
答え 2
「私の身体の範囲はどこまでか」という観点だけに絞って読む。
- 1.外部環境が身体に埋め込まれていることになり逆。
- 2.他者からの把握可能性に話題がずれている。
- 3.自分の意思で埋め込まれていることになり逆。
- 4.正解。
4が正解。
なぜ「身体の範囲」が曖昧なのか。新陳代謝など、常に体の一部が入れ替わっているからである。抜け毛は自分の体か? と考えるとわかりやすい。この曖昧さを踏まえた上で、問われている観点だけに絞って判断する。
答え 4
記号が世界を覆いつくしているのではないという説明を選ぶ。
- 1.選択肢の意味が不明。
- 2.正解。
- 3.説明できる・できないを議論していない。
- 4.規則に従って動いているは誤り。
2が正解。
記号は状況を説明した説明であって、その記号があり、その記号に従って動いているわけではないという論旨を中心に考える。
答え 2
言語の説明の論理性に絞って考える。
- 1.正解。
- 2.外国語学習で文法を度外視するとは言っていない。
- 3.身体化された言語は規則を外れて喋っているとしても規則を無視しようと思っているわけではないという意味。
- 4.文法を思い浮かべるはありえない。
1が正解。
母語話者や熟達した外国語話者は規則が不要になるのではなく、言語が身体に埋め込まれた状態になると書いてあることを理解する。規則を意識しなくなることと、規則が要らなくなることは別の話である。
答え 1
人間の知の集大成という論理を選ぶ。
- 1.人間の知を使った記述がない。
- 2.正解。ただし「不可能な方法を使い」の記述は本質からずれている。
- 3.得たばかりの知識をそのままという記述はない。
- 4.発展したものは誤り。
2が正解。
本文はここでは比較的わかりやすく書かれている。AIの知能はAI自身の創造によって生まれたものではなく、人知の集大成を高速に検索・再構成しているという論旨に合った選択肢を選ぶ。
答え 2
問題文が読み解くことを要求している範囲を判断するのが難しい。消去法で解く。
- 1.選択肢内容が不一致。
- 2.言語として扱うべきという主張はない。
- 3.正解。消去法で残る。
- 4.するべき論を議論していない。
3が正解(消去法)。
本文も選択肢も混乱しているが、「本文を通して」という前置きから最終帰着点「身体ははかなく、だからこそAIの知とは違う価値がある」への前振りとして読む。厳密な哲学的整理としては粗いが、ドレイファスの議論を「人間を目指したから失敗」と強引にまとめると解きやすい。
また、「初期の人工知能の企ては、出発点において失敗している」には棒線が引かれていないことにも着目する。似たような文は本文に出てくるが、この箇所を直接問うているわけではないという出題者の意図である。
答え 3
はかない体に埋め込まれている知性こそ最高という主張に沿って選ぶ。
- 1.最高感がない。
- 2.埋め込みから独立したは誤り。
- 3.正解。
- 4.人工知能で実現されたは明らかに誤り。
3が正解。
正答率は低いが、この文の主旨を見誤らなければ比較的簡単に解ける。→ 論説文の解き方 を参照。
答え 3
二 批判的読解
本文は複数の根本的な問題を抱えている。批判的に読んだ上で、ノイズを除いて主旨を掴む練習として活用する。
冒頭から「私が身体に埋め込まれている」と述べるが、「私」が何かを定義しないまま論が進む。「私・知能・身体」を事実上三つの別物として扱いながら、「不可分」と主張している。意図せず自己矛盾を起こしている。
「身体」を定義しないまま「身体ではない」と言う。「機械の定義上」と言いながら機械を定義しない。工学的な機械の定義に従えばAIは機械ですらなく、論の土台が崩れる。
新陳代謝と外部環境への埋め込みの因果を説明しない。「身体に埋め込まれた状態で作動する」の定義を明確にしないまま使う。現象の記述を機械との差異の根拠として使っており、記述が論証になっていない。
ドレイファス、微分方程式、チューリングテストなど、読者との共感を得る目的とは思えない表現を使っている箇所が見受けられる。比喩は人と共感するためのものであるという配慮が欠如している。
「身体を獲得した」と「私が身体に埋め込まれた」は主体と客体が逆転している。冒頭の設定と終盤の選択肢の間で論理が整合していない。言いたいことを一文で言えば、「人間の知能は身体に埋め込まれているからこそAIとは異なり、その身体はかないからこそ価値がある」であり、それを言うために費やした論の量と質が見合っていない。
三 批判的読解をする理由
批判的に読む力と得点する力は別の技術である。しかしこの二つは矛盾しない。
本文の粗さに気づかずに読むと、曖昧な論理に引きずられて選択肢の判断が鈍る。批判的読解とは、本文の中で「主旨として追う部分」と、「保留すべき不明確な部分」を切り分ける技術でもある。
神奈川県の論説問題では、本文中に説明不足や曖昧さがあっても、出題者は主旨に立ち返れば解けるように選択肢を構成していることが多い。そのため、理解できない箇所に執着しすぎず、筆者が最終的に何を言いたいのかを優先して整理することが重要になる。
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