令和7年度 共通選抜 追検査|神奈川県 公立高校入試 国語

問5 論述問題(複数文章読解)|論述は、やっぱり本文がなくても解ける

神奈川県の追検査問題は、県の公開ページでは著作権の関係で本文を確認できない。しかし問5は、Aさんのまとめと選択肢を丁寧に読めば、本文なしでもほぼ答えを導くことができる。

ただし、採点上の注意に示された解答例には、Aさんがまとめていない内容が結論で突然現れるという問題がある。このページでは、解き方とあわせて、その論述構造も検討する。

論述文の解き方

国語のテストを解くとは、本文を最初からすべて読むことではない。出題者が何を問おうとしているかを、問題文・まとめ・選択肢・指定語句などの構造から解析することである。→ 解き方の体系
「自分の考え」の位置づけに注意
最初に示される「自分の考え」は、二つの文章を読んだ結果として得た結論ではない。Aさんが二つの文章を読むきっかけになった、もともとの問題意識である。したがって、解答の中心は、その後に作られた【Aさんのまとめ】に置く。

一 過去問解説

(ア)選択肢問題 / 文章1・文章2のまとめを照合する

【文章1】と【文章2】を読んで考えたことをまとめた【Aさんのまとめ】の空欄Ⅰ・Ⅱに入る語句の組み合わせを選ぶ。

読解の手順

文章1からⅠを絞る。まとめには、散歩をするなかで「日々の悩みや関心があることから離れられると、新たな気づきを得ることができる」とある。散歩は目的地へ向かうための行為ではなく、歩くことそのものを楽しむ活動である。したがってⅠは「歩行そのものを楽しむ」が最も自然である。

「通勤や通学と同じ」は日々の生活そのものであり、悩みや関心から離れる話にならない。「目的地に向かって歩いていく」も散歩の性質と合わない。「習慣に任せて自動的に歩き続ける」は、日常の習慣から離れて気づきを得るという方向と反対である。

文章2からⅡを絞る。「他の人のつくった短歌を吸収してなぞることにとどまらず」の後には、模倣を越えて新しいものを生み出す内容が入る。したがってⅡは「世の中に存在しなかったものをつくる」である。

「過去の作品を学習した上で創作する」では、「吸収してなぞる」の側から十分に出ていない。「短歌によって驚きの連続を体験させる」は鑑賞者側の話であり、創作の方向を示していない。

  • 1.Ⅰ 歩行そのものを楽しむ / Ⅱ 世の中に存在しなかったものをつくる
  • 2.Ⅰ 目的地に向かって歩いていく / Ⅱ 過去の作品を学習した上で創作する
  • 3.Ⅰ 通勤や通学と同じ / Ⅱ 短歌によって驚きの連続を体験させる
  • 4.Ⅰ 習慣に任せて自動的に歩き続ける / Ⅱ 短歌を始めた頃のつくり方のままでいる

1が正解。

文章1は「日常の目的や習慣から離れて歩く」、文章2は「既存作品をなぞるだけでなく新しいものをつくる」という対比で読む。両方とも1が最も自然である。

答え 1

(イ)条件作文 / 「解放」「生成」を用いた記述

【Aさんのまとめ】の最後に入ることばを、指定語句「解放」「生成」を使って書く。

解き方

「解放」「生成」は、何から解放されるのか、何を生成するのかを考える。

「解放」は、文章1のまとめにある「今までこだわってきたことから離れる」を使う。つまり、こだわりから自分を解放することである。

「過去の作品の再現にならないように気をつける」では、注意すべきことを挙げているだけで、新しいものを生み出すという内容にならない。そこで、(ア)の選択肢にある「世の中に存在しなかったものをつくる」を使い、「つくる」を「生成する」に言い換えて文を調える。

解答例(三十一字)

今までこだわってきたことから自分を解放し、新たな表現を生成する

文章1の「今までこだわってきたことから離れる」と、文章2の「世の中に存在しなかったものをつくる」を、そのまま一文にまとめている。

「新たな表現」としたのは、「言葉を生成する」では造語を作るという意味に読めるためである。ここで生み出すのは言葉そのものではなく、言葉を使った新しい表現や作品である。

二 採点上の注意を検討する

まとめにない内容が結論で突然現れている検証

【Aさんのまとめ】の最終段落は、それまでにAさんが整理し、認知した内容を総括する部分である。したがって、そこに、それまでのまとめに現れていない内容が突然出てくるのは不自然である。

しかし、採点上の注意では「自分を支配するもの」という表現が使われている。たとえ本文にその表現があったとしても、Aさんは文章1について「今までこだわってきたことから離れることが必要なのではないか」とまとめている。この段階で「自分を支配するもの」という概念は、Aさんのまとめから外れている。

さらに、「自分を支配するもの」は外部または内面から自分を拘束するものを想起させる。一方、「こだわってきたこと」は、自分自身が持ち続けてきた執着や固定観念である。両者はそのまま同じ内容とはいえない。

最終段落で「自分を支配するもの」とまとめさせたいのであれば、文章1についてのまとめの段階で、その概念を示しておくべきである。

「自分だけの言葉を生成する」は造語に読める検証

採点上の注意にある「自分だけの言葉を生成する」という表現では、既存の言葉ではない新語を作る、つまり造語のような意味に読める。

文章2で述べられているのは、他人の短歌をそのままなぞるのではなく、新たな表現や作品を生み出すことである。創作されるのは「言葉そのもの」ではなく、言葉を用いた表現や作品である。

【Aさんのまとめ】でも「言葉による創作活動」と書かれており、「言葉の創作」とは書かれていない。このため、このページでは「新たな表現を生成する」とした。

この二点について、採点上の注意を支持しない結論

これは、神奈川県の問5の構造そのものに対する批判ではない。むしろ、メモやまとめから出題者の意図を読み、条件に合わせて答えを組み立てる問題として評価している。

ただし、今回の採点上の注意に示された「自分を支配するもの」「自分だけの言葉を生成する」という二つの表現は、Aさん自身のまとめと論理的につながっていない。この二点について、私は採点上の注意を支持しない。

解説者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

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