神奈川の物語文は、非常にやりやすい選択肢構成であることが多い。本年度もそうである。冒頭の枠内を読み、選択肢の構造を理解すれば、それだけで正解を導ける問題がほとんどである。物語文に2ページ半を読む時間を費やすより、論説や古文に時間を使う方が得点効率は高い。以下の解説は本文を読む前に選択肢を熟読したの選び方である。
令和7年度 共通選抜 本検査|神奈川県立高校入試 国語
問2 物語文読解|水墨画とシイタケと水帆
① 冒頭の枠内はよく読む。登場人物・状況・経緯が凝縮されている。
② 一人称小説では「僕」を中心に世界が展開している。それを忘れてはならない。
③ 選択肢が出題順に並んでいる場合、前の選択肢自体がストーリー展開のヒントになる。
① 主人公:大学生なのに水墨画家を名乗っている「僕(青山)」——この違和感が物語の深みを予告している。
② 状況:小学1年生対象の水墨教室の2回目の授業。
③ 「水帆」の1回目:筆を使って楽しく課題に取り組んでいた。
④ 2回目の変化:筆の代わりに指を用いる指墨画でシイタケを描かせることにした。
1回目と2回目の落差——この時点で「水帆」の中のざわざわ感が予測できる。反発・戸惑いが選択肢に出てくることは確定している。
神奈川県公立高校入試の問題文は質が高く、その後の展開や登場人物の心情を理解するために必要な情報が、冒頭の枠内に過不足なく与えられています。
一 過去問解説
本編の主人公は「僕」であり、「僕」目線の主役は「水帆」だと思われる。シチュエーションを考えると「心の目で見ろ」系の、ありがちな展開だろうと想像がつく。選択肢に共通する「年配の女性」は引き立て役であり、主役ではない。
- 1.高度な内容の指導をしようとしたから。
- 2.シイタケを見本として使っていたのをやめさせたかったから。
- 3.形にとらわれず楽しんで心のままに描けばよいと思ったから。
- 4.実物を持ち上げる動作を目で見せたかったから。
3が正解。
1は「年配の女性」に高度な指導をする話ではない。主役ではない人物にフォーカスしている時点で除外。2は意味がとりにくく、こういった意味不明な選択肢は除外する。4も「年配の女性」の動作を見せる話ではない——主役ではないの一語に尽きる。3の「形にとらわれず楽しんで描く」が「心の目で見ろ」系の王道と一致する。
答え 3
水彩画がうまい「水帆」は指墨画に反発している。指墨画は反発の対象——この軸で選択肢を見る。
- 1.自分の気持ちが言葉としては表されなかったが、表情に心の内が出ている。
- 2.指墨画の描き方を教わりたいと思っていたのに、「僕」がなかなかこたえてくれない。
- 3.納得のいく表現ができず、きれいな線にすることを目指し真剣に絵を描いている。
- 4.うまく描けないことを自覚して落ち込んでいたときに、線が美しくないことを「僕」に批判された。
1が正解。
指墨画は反発の対象である。2は「教わりたい」と書いており、反発している「水帆」の気持ちと逆方向。除外。3は「きれいな線を目指す」と書いており、これも指墨画に前向きになっている。除外。4は「僕」が「水帆」を批判したという展開になっており、ストーリーとして不自然。除外。1の「心の内が出ている」という内側への向き方が反発の表れとして正しい。
答え 1
「心の目で見ろ」から「心の目で見て描けば、線が繊細でなくても真の姿が描ける」に発展していく流れだろう。上っ面の観察では真の姿が見えない——感覚が内側に向かって動くかどうかで絞る。
- 1.目で捉えていなかった笠の周囲のでこぼこに気づいて心が動き、光に照らし光にかざしてシイタケを全体から眺めた。
- 2.シイタケがどのようなものなのか感性によってつかむことで、絵に表すものと違うということがわかって驚いている。
- 3.シイタケを触ることで、見つけてはいたが気にしていなかった笠の周囲のでこぼこを再確認した結果、絵の精度をより高めようとしている。
- 4.シイタケに触っただけでは、笠の周囲のでこぼこの存在に気づくことができなかったため、シイタケの本質について明るい場所で触覚と視覚を交えながら把握し、新たな表現を生み出そうとしている。
1が正解。
2・3は「触ることが重要」という技術的な話に終始している。除外。4は意味不明な要素が混入している——こういった選択肢は一つ混ぜてくる。除外。1だけが「心が動き」という感覚が内側に向かって動く描写になっている。1以外ありえない。
※ 正答率69.9%。「触ること」の物理的な意味に引っ張られると2・3を選んでしまう。「心が動く」という内側の変化に着目することが鍵。
答え 1
「水帆」が「僕」の思惑を受け取り、共感と喜びを示した。その喜びを「僕」がどう感じたかを問う。
- 1.指墨画に苦手意識を持っていた「水帆」が絵を描き上げたことに心を打たれ圧倒された。
- 2.「水帆」が触れた感触を通して形を超えたものを感じ取ったことを嬉しく思うとともに、感じ取ってもらえたことに感動している。
- 3.「水帆」の言葉選びの正確さに感心した一言で複雑な感覚をわかりやすく表現した絵が、描く喜びで満たされていることに感心した。
- 4.「水帆」が自分の感覚を使ってシイタケそのものを捉えたことを喜びつつ、徐々に整っていく過程を見て子どもの成長の速さに感激している。
2が正解。
1は視覚を通した評価の話で、本質ではない。除外。3は言葉選びの正確さという技術的な話。関係ない。除外。4は子どもの成長の速さという話で、主題から逸れる。除外。2の「感じ取ってもらえた喜び」が核心と一致する。少し表現がオーバーかとも思えるが、消去法でも2一択。
答え 2
(ア)〜(エ)まで来た時点で、選択肢自体がストーリーの起承転結を形成していることが確認できる。
(ア)前振り・起 → (イ)(ウ)盛り上げ・承 → (エ)クライマックス・転 → (オ)落ち・結
これは偶然ではない。出題者は物語の感情変化の流れに沿って設問を配置している。前の設問の選択肢を読むことで、次の設問の文脈が自然に絞れる。「前の選択肢がストーリー展開のヒントになる」というのはこの構造のことである。
指導者として伝えたい本質——楽しんで生き生きと描くこと——が核心。記憶・暗記・自己開示・自己評価にすり替わっている選択肢を除外する。
- 1.昔教わった大事な言葉を忘れていたことを素直に伝えた上で、語句の響きをずっと覚えていてほしいという思いを込めて読む。
- 2.大人も完璧ではないことを明かした上で、今教えた語句の響きをずっと覚えていてほしいという思いを込めて読む。
- 3.自分の記憶力が幼い子どもより劣っていることを、指墨画などに興味を持ってもらいたいと願いつつ生き生きとした線で読む。
- 4.一番大切なことすら忘れてしまうことを認めつつ、楽しんで生き生きと描くことが一番大切だという思いを込めて読む。
4が正解。
1は「語句の響きを覚えていてほしい」と語句・言葉が主役になっている。語句は主役ではない。除外。2も同様に「語句の響き」に引っ張られている。除外。3は「記憶力が劣っている」という自己評価の話で指導者の気持ちとして不自然。除外。4の「楽しんで生き生きと描くことが一番大切」が指導者として伝えたい核心と一致する。「大事な物事を忘れた」と「先達の言葉を忘れた」のどちらかは本文を読まないと確定しないが、一番もっともらしい表現として4が残る。
答え 4
まず選択肢全体の主語を確認する。主体は「僕」であり「水帆」ではない。主語が「水帆」になっている選択肢、二人が主語になっている選択肢は即除外。
- 1.「水帆」と「僕」が技法を忠実に守ることで成長していく様子を描いている。
- 2.「僕」と「水帆」が言葉を尽くして二人のやり取りを軸に描いている。
- 3.水墨画を教える「僕」が、指で絵を描くことを通して成長していく「水帆」と接することで、思いを伝え合い、自分の向き合い方も変化していく様子を描いている。
- 4.水墨画の魅力に気づいた「僕」が、形を正確に描く必要はないと気づいていく様子を指を用いる場面を中心に描いている。
3が正解。
1は「水帆」が先に来ており、技法忠実も関係ない。除外。2は二人が主語になっており、言葉を尽くすも方向性が違う。除外。4は「僕」が主語になっているが、「指墨画を教えている僕」が「正確に描く必要がないと気づく」はずがない——すでに知っているはず。除外。3は「僕」が主語であり、(オ)から続く「自分の向き合い方」という視点も入っていて正解。
答え 3
二 正答率データ
(ウ)だけが突出して低い。他は85%以上なのに、(ウ)だけ70%を切っている。選択肢先読みで解けばほぼ全問正解できるが、(ウ)の絞り込みには注意が必要である。
| 設問 | 問われていること | 正答率 |
|---|---|---|
| (ア) | 「僕」がシイタケを取り上げた理由を選択する | 96.5% |
| (イ) | 眉をひそめたときの「水帆」を説明したものを選択する | 95.9% |
| (ウ) | 笠の周囲のでこぼこに触れたとき、大きく目を見開き、光にかざしてシイタケを全体から眺めたときの「水帆」を説明したものを選択する | 69.9% |
| (エ) | これまで感じたことのない喜びだったと思ったときの「僕」を説明したものを選択する | 86.8% |
| (オ) | 「僕」の気持ちをふまえて「忘れちゃうよ。どんな大切なこともね。」という部分の朗読の仕方を選択する | 85.2% |
| (カ) | この文章について述べたものを選択する | 87.9% |
三 方法論の検証
解説の途中に迷いが生じる場面があったが、それは鑑賞の仕方の迷いであって、選択肢の選択の迷いではない。試験では、正解が確定した時点で次へ進む。作品を楽しむのは試験の後でよい。
時間が余れば、見直しに傍線近くを読めばよい。正解かどうかを確認するために。
(ウ)以外の5問は選択肢先読みだけで即断できる構成になっていた。登場人物の関係(水墨画家の「僕」と生徒の「水帆」)、感情の方向(内側か外側か)、指導の本質(技術か感覚か)の三軸を持つだけで、本文を読まずに選択肢を絞れる。
物語文に費やす時間を最小化し、論説文・古文に時間を配分する。これが物語文を選択肢先読みで解く理由である。
(カ)で確認したように、選択肢の主語が誰かを最初に見るだけで除外できる選択肢がある。一人称小説では「僕」が中心であり、「水帆」が主語になっている選択肢や二人が並列になっている選択肢は危険信号である。主語の確認は選択肢先読みの最初の一手になる。
正答率96%台の(ア)(イ)は出題者が「ここは取れて当然」として設計した問題であり、69.9%の(ウ)は「ここで差をつける」という意図が見える。出題者の設計を読んで時間配分を決めることが戦略的な解答につながる。
解説を読んで、もっと詳しく学びたいと思ったら。
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