令和6年度 共通選抜 本検査|神奈川県立高校入試 国語

問2 物語文読解|若者よ、親の愛を知れ。前を向いて生きろ!

神奈川の物語文は、非常にやりやすい選択肢構成であることが多い。本年度もそうである。冒頭の枠内を読み、選択肢の構造を理解すれば、それだけで正解を導ける問題がほとんどである。物語文に2ページ半を読む時間を費やすより、論説や古文に時間を使う方が得点効率は高い。以下の解説は本文を読んでいない私の選び方である。ただし、選択肢からは選びきれないときのみ、本文を読む。

なお、注釈に「ハイヤー=客の申し込みに応じて営業する貸し切り乗用車」とある。ここにジェネレーションギャップを感じる。より子、私、諸君を現在の年齢順に並べると、私はより子の方に近い。

なぜ選択肢先読みなのか(物語文の解き方)

国語のテストを解くとは、出題者が何を問おうとしているかを、傍線・選択肢・問題文などの構造から解析することである。→ 解き方の体系
冒頭の枠内から読み取れること
なぜ、ジェネレーションギャップを出したか。意図がある。 ① 時代:昭和三十五年——戦後15年、高度経済成長の始まりの頃。
場所:青森県——地方、東京・大阪ではない。
主人公の年代:結婚する「より子」——おそらく二十歳前。兄姉くらいの年齢かもしれない。父親も君たちの親よりも若いかもしれない、四十前後であろう。
この三点を押さえると、感情は言葉で直接表現されず、行動や表情に滲み出る展開が予測できる。
出題者からのメッセージ|若者よ!前を向いて生きていけ。
選択肢を先読みすると、父と「より子」の関係の変化が起承転結で描かれていることがわかる。かつての心無い言葉(起)→ 父の今の心境(承)→ かつてを振り返り今旅立つ(承)→ 気持ちは最高潮に達した(転)→ 父の愛を感じ静かに幕を閉じる(結)→ この文章で言いたいこと(総括)。

一 過去問解説

(ア) 行動の理由 / 起・かつての心無い言葉

「より子」がその時の「父」の顔を忘れられない理由を選ぶ。選択肢から「父」が「より子」を傷つけた過去があることが読み取れる。気恥ずかしさのふりをしたのか、恥ずかしさのあまり傷ついたのかは本文確認が必要。

  • 1.学校に来ることを恥ずかしく思っていたから。
  • 2.深く傷ついていたことを知らず、気恥ずかしさのふりをしていたから。
  • 3.真っ黒に汚れた姿で笑うことで、傷ついても無理に笑う「父」の姿を見たから。
  • 4.学校まで迎えに来てくれる「父」に感謝しつつも、周囲の目が気になるため一人で帰りたいと思っていたから。

3が正解。

本文確認:恥ずかしかった→傷ついたとある。気恥ずかしさのふりをした(2)ではなく、傷ついても無理に笑っている父の姿(3)が正解。1は娘への恥とは関係ない。4は感謝しつつも帰りたいというのは本文の方向とずれる。

答え 3

(イ) 心情説明 / 承・父の今の心境

戸惑い顔からはにかみ顔になっていたときの「父」を説明する。正答率44.0%。「親の気持ちを考えろよ」と言いたい設問である。

  • 1.娘に恥をかかせてしまったことを恥ずかしく思い、自分の振る舞いを後悔しているから。
  • 2.慣例通りに行動しなかったことを恥じる気持ちがあるが、嫁入り先へ向かうことに喜びを感じ始めているから。
  • 3.嫁入り先へ向かう「より子」の要望に応じて馬で嫁入り先へ向かうことができたことに照れくさい喜びを感じているから。
  • 4.白無垢姿の娘を馬に乗せて嫁入り先へ向かうことに恥ずかしさと気恥ずかしさを感じているから。

3が正解。

1は娘への恥は関係ない。除外。2は「慣例通りにやらない」のは父も知っているはず——自分で決めたことである。除外。4は恥ずかしさと気恥ずかしさは違う感情であり、ここで恥ずかしいはありえない。除外。3の「照れくさい喜び」が核心。お父さんは嬉しいのだ。正答率44%の低さは、この「親の嬉しさ」が中学生には見えにくいことを示している。

答え 3

(ウ) 朗読の仕方 / 承・かつてを振り返り今旅立つ

「そぅかぁ……。」という部分の朗読の仕方を選ぶ。前を向いて生きていく——この方向で選ぶ。

  • 1.過去の出来事を悔やみながら、沈んだ気持ちで読む。
  • 2.かつての出来事を思い出しながら、これからの新しい生活への期待を込めて読む。
  • 3.父への不満が残りつつも、旅立ちの寂しさを表現して読む。
  • 4.自分が幼い頃の記憶を大切にしていることを示しながら、故郷の風景を織り交ぜながら読む。

2が正解。

前を向いて生きていく——この一点で2が選べる。1は悔やむ・沈むという後ろ向き。除外。3は不満・寂しさという後ろ向き。除外。4は故郷の風景という話で方向性が違う。除外。2の「これからの新しい生活への期待」が「前を向く」という方向と一致する。

答え 2

(エ) 心情説明 / 転・気持ちは最高潮に達した

父の後ろに座っていてよかったと思ったときの「より子」を説明する。照れくさくて嬉しい——これが核心。本文確認が必要な問。

  • 1.父の後ろに座ることで、気恥ずかしい感情とともに父への感謝の気持ちを感じている。
  • 2.父が菱刺しを施した下ばきを大切に履き続けていることを知り、安心感を覚えている。
  • 3.幼い頃に自分が菱刺しを施した下ばきを父に贈ったことを思い出し、一人で静かに味わいたい喜びを感じている。
  • 4.結婚の日を迎えた「より子」が、嫁入り先に向かう時間を「父」と過ごすことへの期待を高めている様子を読む。

1が正解。

本文確認:照れくさくて嬉しくてとある。1の「気恥ずかしい感情とともに父への感謝」が一致する。2は「履き続けている」ではなく始めて履いたので完全アウト。除外。3は一人で静かに味わいたいという感情はこの場面にそぐわない。除外。4は安心感の根拠が不明確。除外。

答え 1

選択肢自体が起承転結になっている ここが北川式の核心

(ア)〜(エ)まで来た時点で、選択肢自体がストーリーの起承転結を形成していることが確認できる。

(ア)かつての心無い言葉・起 → (イ)(ウ)父の心境・かつてと今・承 → (エ)気持ちは最高潮・転 → (オ)父の愛を感じ幕を閉じる・結 → (カ)総括

令和7年度でも同じ構造が確認された。これは偶然ではない。出題者は物語の感情変化の流れに沿って設問を配置している。前の設問の選択肢を読むことで、次の設問の文脈が自然に絞れる。

(オ) 心情説明 / 結・父の愛を感じ静かに幕を閉じる

鼻をぐずぐずさせながら、震える声で謝罪の言葉を感謝の言葉に言い替えたときの「より子」を説明する。親の思いを受け取った結末。

  • 1.父が自分を大切に育ててくれたことを次の中から一つ選び、その番号を答えなさい。
  • 2.「父」との別れの時が迫っていることに気づき、父への感謝の言葉を伝えようとしている。
  • 3.父が菱刺しの下ばきを施したことで安心感を覚え、感謝の言葉を述べている。
  • 4.父が自分のために菱刺しを施してくれたことへの感謝の気持ちと、父への申し訳なさが入り交じって涙が出てきたが、「父」との別れの時が迫っていることを認め、楽しんで生き生きと描くことへの感謝を伝えようとしている。

4が正解。

親の思いというものを考えれば4一択。感謝と申し訳なさが入り交じる——これが親子の情感の核心である。1は選択肢の形をしていない(設問文が混入している)。除外。2・3は感謝だけで申し訳なさが入っておらず、感情が単純化されすぎている。除外。

答え 4

(カ) 文章全体の説明 / 総括

この文章について述べたものを選ぶ。主語を確認する。「前を向いて生きていく」という方向と、親の思いを改めて考えさせられている「より子」を中心に見る。

  • 1.嫁入り先に向かう道中の出来事を通じて、「より子」が故郷への思いを強め、生まれ育った場所を離れることへの不安が膨らむ中で、周囲の風景を眺めるように読む。
  • 2.結婚生活に対する期待を高めていく様子を、「父」から励まされ一緒に嫁入り先に向かう「より子」を、故郷の豊かな自然の風景を織り交ぜながら描いている。
  • 3.生まれ育った故郷を離れることになった「より子」が、結婚祝いで洗濯機を贈られたことをきっかけとして登場人物の視点から描いている。
  • 4.結婚の日を迎えた「より子」が、嫁入り先に向かう「父」と過ごす時間を通じて、故郷の風景や「父」の姿を見ながら、自分の気持ちの深さを感じ取っていく様子を、故郷の豊かな自然の風景を織り交ぜながら描いている。

4が正解。

親の思いを改めて考えさせられている「より子」を中心に考えれば4一択。1は不安が膨らむという後ろ向きの方向で「前を向く」という主旨と逆。除外。2は「父から励まされ」という表現が本文の関係とずれる。除外。3は洗濯機が登場人物の視点のきっかけというのは本文の核心ではない。除外。4が「より子」の気持ちの深さを感じ取っていく流れを正しく捉えている。

答え 4

二 正答率データ

(イ)の44.0%が突出して低い。親の気持ちが中学生には見えにくいことを示している。他は73〜93%台と安定している。

設問 問われていること 正答率
(ア) 「より子」がその時の「父」の顔を忘れられない理由を選択する 92.9%
(イ) 戸惑い顔からはにかみ顔になっていたときの「父」を説明したものを選択する 44.0%
(ウ) 「より子」の気持ちをふまえて「そぅかぁ……。」という部分の朗読の仕方を選択する 89.4%
(エ) やはり父の後ろに座っていてよかったと思ったときの「より子」を説明したものを選択する 73.7%
(オ) 鼻をぐずぐずさせながら、震える声で謝罪の言葉を感謝の言葉に言い替えたときの「より子」を説明したものを選択する 82.8%
(カ) この文章について述べたものを選択する 79.6%

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解説者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

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