令和6年度 共通選抜 追検査|神奈川県 公立高校入試 国語

問5 論述問題(複数文章読解)|Aさんのまとめのまとめが答えである

神奈川県の追検査問題は、カナロコでは掲載されていない。県のページでは著作権の問題で本文が見られない。しかし問5に限っては、Aさんのメモとまとめを丁寧に読めば、本文なしで答えを導くことができる。

論述文の解き方

国語のテストを解くとは、出題者が何を問おうとしているかを、傍線・選択肢・問題文などの構造から解析することである。→ 解き方の体系
Aさんのメモ・まとめの構造
この年の問5は、Aさんのメモが例年より詳細で、エッセンスが濃縮されている。つまりメモ→文章別小括(まとめ)→総括という入れ子構造が完成している。この構造が見えれば、本文は補助的な確認手段にすぎなくなる。さらに、Aさんの考え(自分の意見)が問題文にも記載されており、メモの内容とほぼ一致している。これは珍しい形式で、答えへの道筋がより明確に示されている。

一 過去問解説

(ア) 選択肢問題 / Aさんのメモ・まとめの読解

AさんのメモとAさんのまとめを照合し、空欄Ⅰ・Ⅱに入る語句の組み合わせとして最も適切なものを選ぶ。

読解の手順

空欄Ⅰの絞り込み(文章1)。メモの「情報の送り手」欄を見ると、「・・・だけでなく[Ⅰ]が加わった」という構造になっている。「・・・」の部分、すなわちⅠの前に来るのは「プロ」の記者・知識人である。Ⅰに入るのはその反対、つまりアマチュア・一般ユーザーの方向の語句になる。

選択肢の検討(Ⅰ)。1「情報をもつ一般ユーザー」はアマチュア方向でOK。3「様々な立場の一般ユーザー」も一般ユーザー方向でOK。2「ユーザーのふりをしたボット」はボットという概念が文章全体の趣旨から外れる可能性がある。4「実名で投稿する新聞記者」はプロフェッショナルの側なのでNG。この段階で1か3に絞られる。

空欄Ⅱの確認(文章2)で決定。文章2ではカーナビや地図アプリを例として、目的地までの全体経路を把握しなくなることが示されている。つまりⅡは「全体像が見えなくなった」方向の語句になる。選択肢のⅡを見ると、1「目的地を入力せずに用が済むようになった」は目的地の話でありNG。2「次はどこで曲がるのかわかりづらくなった」は次の動作の話でありNG。3「次にとるべき行動しか確認しなくなった」が全体を見ずに目前だけ見るという趣旨に合致する。4「目的地までの行程を把握しなくなった」も近いが、3の方が「視野の狭窄」を直接表している。Ⅱ=3と確定。Ⅱが3になる組み合わせは選択肢3のみ。Ⅰも3「様々な立場の一般ユーザー」に決まる。

  • 1.Ⅰ 情報をもつ一般ユーザー / Ⅱ 目的地を入力せずに用が済むようになった
  • 2.Ⅰ ユーザーのふりをしたボット / Ⅱ 次はどこで曲がるのかわかりづらくなった
  • 3.Ⅰ 様々な立場の一般ユーザー / Ⅱ 次にとるべき行動しか確認しなくなった
  • 4.Ⅰ 実名で投稿する新聞記者 / Ⅱ 目的地までの行程を把握しなくなった

3が正解。

4はⅠが新聞記者=プロフェッショナル側なので即除外。2はⅠがボットで趣旨から外れる。ⅠはⅠ「情報をもつ一般ユーザー」と3「様々な立場の一般ユーザー」が残る。Ⅱを見ると、「全体を見ずに目前の情報だけ確認するようになった」という趣旨に最も合うのが3「次にとるべき行動しか確認しなくなった」。その組み合わせは選択肢3のみ。Ⅰも3に決まり、答えは3と確定する。

📌 本筋から少し離れます――カーナビ・地図アプリの話

文章2ではカーナビや地図アプリを使うことで、目的地までの全体経路を把握しなくなったという状況が示されている。カーナビを知らない人もいるかもしれない。家に車がなければ見たことがない場合もあるし、今は車があってもスマホナビを使う家庭も多い。知識がなければ多少不利ではあるが、あらゆる試験においてこの種の有利不利は存在する。常日頃から身の回りのものに興味を持ち、「これはどういう仕組みだろう」と考える習慣が、国語に限らず全教科の得点を底上げする。試験で知らないものが出てきたときは、文脈から意味を推測する力が問われていると考えよう。

答え 3

(イ) 条件作文 / 「送り手」「視野」を用いた記述

Aさんのまとめの空欄に入ることばを、条件を満たして書く問題。指定語句は「送り手」と「視野」。

条件

  • ①書き出しの「デジタル化された社会で偽情報に感わされないためには、」に続けて書き、文末の語句につながる一文となるように書くこと。
  • ②書き出しと文末の語句の間の文字数が三十字以上四十字以内となること。
  • ③【文章1】と【文章2】の内容に触れていること。
  • ④「送り手」「視野」という二つの語句を、どちらもそのまま用いること。

📝 句点について

条件①は「一文となるように書くこと」としており、書き出しと文末の語句はあらかじめ指定されている。「一文となるように」とは、指定された書き出しから指定された文末までの全体が一つの文をなすということである。解答欄の中(書き出しと文末の間)に句点を打つと二文構成になり、条件を満たさなくなる。解答欄の中では句点を打たないこと。

読解の手順

「送り手」の手がかりはAさんのまとめ・文章1にある。まとめの「文章1」欄に「取材に裏付けられた情報の送り手であるかどうかを確認する」という趣旨の記述がある。送り手が信頼できるかを確かめることが文章1のポイントである。

「視野」の手がかりはAさんのまとめ・文章2にある。まとめの「文章2」欄に「視野を狭めないようにして」という趣旨の記述がある。目的の情報だけを見るのではなく、周辺の情報も含めた全体像を捉えることが文章2のポイントである。

「ことを心がける」という文末につなぐ。条件①の文末は「ことを心がけるべきだ。」となっている。「〜することを心がける」という形で締める。目指す方向(すべき行動)として書くこと。

字数の組み立て。書き出しと文末を除いた部分が三十字以上四十字以内。二つの指定語句を確実に入れながら、「送り手」に関することと「視野」に関することの両方に触れる。

解答例(40字)

デジタル化された社会で偽情報に感わされないためには、取材に裏付けられた情報の送り手であるかを確認し、視野を広げ物事の全体像を捉えることを心がけるべきだ。

「送り手」で文章1(情報源の信頼性確認)を、「視野」で文章2(全体像を捉える)を回収している。二つの語句がそれぞれ別の文章の内容に対応しているため、条件③「両文章の内容に触れる」も自然に満たされる。

キーワードをAさんのまとめからそのまま転記するのではなく、条件語句と論旨を結びつけて一文に組み立てることが求められる。→ 論述文の解き方

二 方法論の検証

Aさんのまとめが答えの地図である 検証

問5の構造は「メモ≒答え」である。Aさんはメモを見ながらまとめを書いているため、まとめの中にはメモの内容が文章化されている。出題者はそのまとめの言葉を空欄にしているだけである。本文を読む前にまとめを読めば、何が問われているかが先に見える。この年は特にAさんの考えが問題文にも書かれており、メモ・まとめ・問題文が一体として答えの構造を形成している。

(ア)の絞り込みアプローチについて 検証

Ⅰ・Ⅱの組み合わせ問題では、文章1と文章2それぞれで有力・圏内・除外を判定し、両方で圏内に残る選択肢をとる。Ⅰでは1と3が残り、Ⅱで組み合わせが限定されることで1に一択となる。どちらか一方の空欄だけで判断しようとすると迷いが生じやすく、必ず両方のⅠ・Ⅱをセットで検討することが有効である。

(イ)の作文における注意点 検証

指定語句「送り手」「視野」はそれぞれAさんのまとめに含まれており、どちらが文章1・文章2に対応するかが明確である。字数は書き出しと文末を除いた部分で三十字以上四十字以内。二語を入れながら両文章の内容に触れるには、一語一文章に対応させる組み立てが最も効率的である。また、条件の「一文」指定により解答欄内に句点は打たない。

解説者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

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