令和6年度 共通選抜 本検査|神奈川県立高校入試 国語

問3 論説文読解|ちりばめ型、傍線近くを精読する

論説文は筆者の主張を追う読み物である。選択肢の正誤は本文の主旨に照らして判断する。ただし、本文がちりばめ型の場合は主旨だけで答えを決めようとすると罠にはまる。傍線近くを精読し、消去法で仕留める。

国語のテストを解くとは、出題者が何を問おうとしているかを、傍線・選択肢・問題文などの構造から解析することである。→ 解き方の体系
ちりばめ型
本文の論型と読み方
最終段落が「いずれにせよ重要なのは」という言葉で始まり、急速に話を収束させている。主旨だけで答えを決めようとするとどの選択肢も正しそうに見える。各傍線部は均等な部分解釈として、正解は傍線近くに存在する。→ ちりばめ型の解き方
本文の主旨
衣服はコミュニケーションのメディアとして機能するが、普遍的な言語コミュニケーションのメディアとは言えない。意味は帰属集団によって異なり、常に変容しながら豊かなコミュニケーションを生み出している。

一 正答率

小問 問題の種類 正答率
(ア)接続詞選び79.2%
(イ)助詞「の」の識別84.2%
(ウ)対義語選択88.7%
(エ)傍線部の理由説明56.7%
(オ)傍線部の内容説明54.6%
(カ)傍線部の理由説明52.4%
(キ)傍線部の内容説明67.8%
(ク)傍線部の内容説明55.1%
(ケ)本文全体の説明65.5%

(ア)〜(ウ)は文法・語彙の問題で正答率が高い。(エ)〜(ク)は読解の核心に近いほど正答率が下がっており、(カ)はほぼ二択状態である。ちりばめ型の罠と、選択肢の言葉に引っ張られる危険性が正答率に表れている。

二 過去問解説

(ア) 接続詞選び 正答率 79.2%

AとBに入る接続詞の組み合わせを選ぶ。

  • 1.A さらには / B ただ
  • 2.A そして / B あるいは
  • 3.A なぜなら / B やがて
  • 4.A しかし / B また

1が正解。

Aの前後は「不都合に縛られる」と「内容を検証できなくなってきている」という否定的な内容が続いている。逆説でも理由でもなく、否定的な内容を累加する接続詞が入る。この時点で逆接の「しかし」(4)と理由の「なぜなら」(3)は除外される。「そして」(2)は順接の並列として成立しそうに見えるが、Bの「あるいは」が「その点は現在でも基本的に変わらないだろう。あるいは、ファッションが言語コミュニケーションではないと言っても…」とつながらない。「変わらないだろう」という断定の後に来るのは、留保・譲歩を導く「ただ」が自然である。

答え 1

(イ) 助詞「の」の識別 正答率 84.2%

波線部「単なる名前以上の意味」の「の」と同じ用法を選ぶ。

  • 1.休日に姉の作った料理を食べる。
  • 2.お気に入りの本を読む。
  • 3.寒いのに上着を忘れた。
  • 4.降ってきたのは雪だった。

2が正解。

まず3と4を除外する。3の「の」は逆接の接続助詞的な用法(「のに」)、4の「の」は用言「降ってきた」を体言化する準体助詞であり、どちらも連体修飾とは別の用法である。波線部「名前以上の意味」は「名前以上」という語句が「意味」を連体修飾している。1「姉の作った料理」も全体として連体修飾節が名詞を修飾しているが、節の内部に入って「の」を見ると「姉が作った」と置き換えられる主格を表す格助詞である。全体の構造だけで判断すると1と2が同じに見えてしまう。節内の役割まで見ることが判定の核心である。2「お気に入りの本」の「の」は節を形成せず、直接「本」を連体修飾しており、波線部と同じ用法である。

答え 2

(ウ) 対義語選択 正答率 88.7%

波線部「需要」の対義語として最も適するものを選ぶ。

  • 1.獲得
  • 2.贈答
  • 3.出費
  • 4.供給

4が正解。

「需要と供給」は慣用的なセットとして定着している。1の獲得・2の贈答・3の出費はいずれも受け取る側・使う側・消費する側の語であり、「需要」と同じ側に立っている。対義語として成立するには与える・提供する側の語でなければならず、4の「供給」だけがその条件を満たす。厳密には「需要」が状態・欲求を表すのに対し「供給」は動作を表すという非対称性があり、語義の次元として完全な対義語とは言えないが、他の選択肢が明らかに不適なため選ばざるを得ない。

答え 4

(エ) 傍線部の理由説明 正答率 56.7%

傍線部「本や新聞のように、普遍的な言語コミュニケーションのメディアとして存在しているわけではないのだ」と筆者が述べる理由を選ぶ。

まず読む範囲を確定する。傍線の二つ後の段落が「しかし」で始まっているため、論旨が転換している。根拠を探す範囲は傍線の段落とその次の段落まで。

  • 1.衣服だけを用いた場合に伝えられない意味を、文字や音声と組み合わせることで見る人に読み取らせることができるということ。
  • 2.通常は衣服同士を組み合わせることで伝達している情報を、文字を書いたり音声を発したりすることによっても誤解なく表現することができるということ。
  • 3.本や新聞に書かれた文字を読むことで情報が伝達されるが、衣服に関しては文字が書かれているものと書かれていないものの間に伝達できる情報量の差はないということ。
  • 4.本や新聞は書かれた文字の量によって伝達できる情報量が異なるが、メッセージを伝達する機能はなく、衣服に関しては文字が書かれているものと書かれていないものとの間に伝達できる情報量の違いはないということ。

1が正解(消去法)。

2は「衣服同士を組み合わせることで伝達している情報」を「文字・音声でも表現できる」としており、衣服と言語メディアを代替可能なものとして扱っている。本文の論旨と逆方向である。3は「品質保持」や「伝達できる情報量の差はない」という記述が本文にない。4はメッセージ伝達機能がないとしており、本文と矛盾する。1は「普遍的な言語コミュニケーションのメディアとして存在しているわけではない」という本文の論旨に対応しており、文字=意味とは限らないという方向で合っている。普遍性への言及が直接的でない点に不満は残るが、消去法で1。

答え 1

(オ) 傍線部の内容説明 正答率 54.6%

傍線部「衣服を言語として考えうるか」ということについて説明したものを選ぶ。

この段落は「衣服を言語として考えうるか?」という問いに対し試みをした、しかしうまくいかなかった、という構造になっている。言語として意味世界を正しく伝え得るかという議論が本筋である。

  • 1.衣服を文字や音声と組み合わせることによって、衣服だけを用いた場合には伝えることのできない意味を、見る人に読み取らせることができるということ。
  • 2.通常は衣服同士を組み合わせることで伝達している情報を、文字を書いたり音声を発したりすることによっても、誤解なく表現することができるということ。
  • 3.さまざまな形や色を持つ衣服同士の組み合わせによって、文字や音声だけでは表現することが不可能な感情や感覚を、正確に伝えることができるということ。
  • 4.文字や音声に変換することが可能な情報を、さまざまな形や色の衣服を組み合わせることによって、意図したとおりの意味で伝えあうことができるかということ。

4が正解。

1は文字との組み合わせの話であり、本文の議論とずれている。2は「文字に代替可能か」という問いになっているが、本文は代替可能かではなく言語として意味世界を伝え得るかを問うている。3は「正確に伝えることができる」としており、本文の論旨(足りえない)と逆方向である。「正確に」という言葉も常識的にありえない。4は「言語足り得るか」という本筋と一致する。

答え 4

(カ) 傍線部の理由説明 正答率 52.4%

傍線部「強引な読み」と筆者が述べる理由として最も適するものを選ぶ。

選択肢がふわふわしており判断しにくい問題。前段で「新しい」という合意以外はなかったと言っている。この段落の「にもかかわらず」という接続が前段の主張を支持していることも読み取る。

  • 1.衣服を解読しようとしても、衣服の意味は社会集団ごとに異なっていることに加え、流行の服は変化が早いため、ファッションへの関心が高い人から注目されているにすぎず、衣服全体の分析としては説得力に欠けると考えているから。
  • 2.民族衣裳の中には解読できるものもあるが、流行に関しては、ファッションに関する批評が行われておらず、衣服全体の分析とは言えないと考えているから。
  • 3.ファッションに関する批評として行われているが、社会集団の違いを考慮せず、「新しい」ということだけに注目して行われているから。
  • 4.ファッションが社会と密接に関わるために、着ている人の意図を無視した理解に陥ってしまうと考えているから。

1が正解(消去法)。

正答率52.4%はほぼ二択状態であり、選択肢が選びにくい問題である。2は「ファッションに関する批評が行われておらず」としている点が本文と合わない。本文は、批評や説明は行われているが、それが衣服全体の分析としては不十分だと述べている。3は「新しい」という合意しかないのであって、「新しい」からという因果関係にはなっていない。「から」が誤り。4は着ている人の意図は伝播によってすみやかに変容するのであって、読み手が勝手に深読みするという話ではない。方向が違う。1は本文の前後で言っていることをまとめており、消去法で残る。

答え 1

(キ) 傍線部の内容説明 正答率 67.8%

傍線部「豊かなコミュニケーションを成立させている」ということについて説明したものを選ぶ。

  • 1.ファッションは同じものに複数の意味が読み出せるため、個人に合った意味を選択することができ、社会の現状に応じて意味を捉えることができるということ。
  • 2.ファッションには多様な解釈が可能であるため、社会の現状に応じた意味を生じさせており、世代の異なる人々が、歴史上の同じ対象に、いくつもの意味を読み出せるということ。
  • 3.ファッションが何度も新鮮なものとして人々のコミュニケーションを生じさせているが、発信者の意図を想像することを肴にコミュニケーションが発生するということ。
  • 4.ファッションをとる際に考えをめぐらせて新しい表現方法を生み出すことができるが、意味を伝えることが難しいからこそ、人々がコミュニケーションをとる際に考えをめぐらせて新しい表現方法を生み出すことができるということ。

2が正解。

意味が変容していって、常に「新しいもの」として提供され、それが豊かなコミュニケーションになると本文は言っている。1は言っていないとしか言いようがない。3は発信者の込めた意味という視点が本文の論点ではなく、本文は受け手側での意味の変容と多層性を言っている。4は「伝えるのが難しいから」という因果関係が本文にない。難しいのではなく変容するのだ、という区別が重要。1と3は読んで意味が通じにくい時点で除外しやすく、2と4の判定は本文との照合で決まる。

答え 2

(ク) 傍線部の内容説明 正答率 55.1%

傍線部「そういった無駄とも思える言語活動」について筆者がどのように述べているかを選ぶ。

「そういった」で始まっているので、何がそういったかは前に書いてある。この立場の人(ファッション研究者・著者)サイドに立って、常識と選択肢を比べる。マスメディアサイドに立ってはいけない。

  • 1.テレビや出版物で広まる言語による解釈は、衣服を生産する人たちが見せかけで作ったものでしかなく、ファッションの発想が得られるという点で貴重である。
  • 2.マスメディアが言語を用いて行う説明や批評は、ファッションの一面を切り取ったものでしかなく、ファッションにおけるコミュニケーション全体を捉えていく必要がある。
  • 3.マスメディアによる説明や批評は、必ず言語を用いて行われるため、ファッションが社会と密接に関わるために不可欠な視覚的なものである。
  • 4.情報が意味を持たなくなってしまっているが、思想や芸術や日常生活への注意喚起として有効であり、ある時代のファッションの一面に注目することにより、次の流行を作り出すために重要である。

2が正解。

1はもっともらしく見えるが、ファッション研究者や著者の立場でこういう結論を出すとは考えにくい。3はマスメディアによる説明が「不可欠な視覚的なもの」としており、本文の論旨と合わない。4はマスメディアが次の流行を作り出すという話にずれており、傍線部前後の「一面を切り取った言語活動」という説明と対応しない。2はファッションにおけるコミュニケーション全体を捉えていく必要があるという内容で、本文の着地と合っている。

答え 2

(ケ) 本文全体の説明 正答率 65.5%

本文について説明したものとして最も適するものを選ぶ。

「本文について」という問いなので、全体の主旨から考える。

  • 1.他者を理解する際にファッションが有効であることを明らかにするとともに、衣服と言語を比較することで言語が果たすべき役割について論じている。
  • 2.文字が書かれた衣服が情報伝達に役立つことを指摘し、衣服と文字が歴史的にどのような関係を作り上げてきたかについて論じている。
  • 3.衣服が情報伝達の手段となっている現状を踏まえ、学説を複数引用して衣服が言語としての役割を果たしていることを明らかにした上で、ファッションと言語の関係性について論じている。
  • 4.情報を伝達する際に衣服が使われている事例を紹介することで、文字のように衣服が使われていることについて論じている。

3が正解。

1は「言語が果たすべき役割」という規範的な議論になっており、本文は役割を論じているのではなく衣服と言語の関係を記述しているので方向が違う。2は「文字が書かれた衣服が」という主語の連体修飾節が問題で、本文の主旨は衣服全般についての話であり、文字が書かれた衣服に限定した時点で論点が狭まりすぎる。4は「流行に惑わされない」という主張が本文のどこにもない。むしろ本文は流行こそが意味の変容を生むと言っており、逆方向に近い。3は「衣服が情報伝達の手段となっている現状を踏まえ、学説を複数引用して衣服が言語としての役割を果たしていることを明らかにした上で、ファッションと言語の関係性について論じている」という内容で、衣服が情報伝達の手段の一つであること、言語として完全には足りえないが、コミュニケーションの一翼を担っているという本文の論旨と一致する。

答え 3

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解説者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

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