令和6年度 共通選抜 本検査|神奈川県公立高校入試 数学

問3(エ) 食塩水なのに鶴亀算?

この問題は、方程式でも天秤法でも解ける。しかし、構造を見ると鶴亀算型の問題だ。

解法を選ぶのは単元名ではなく、問題の構造だ。その考え方を、この問題を題材に見ていく。

問題

エ) 4%の食塩水 300gが入ったビーカーから、食塩水agを取り出した。その後、ビーカーに残っている食塩水に食塩agを加えてよくかき混ぜたところ、 12%の食塩水になった。
このとき、の値として正しいものを次の1~8の中から1つ選び、その番号を答えなさい。

1. a=18 2. a=20 3. a=21 4. a=24
5. a=25 6. a=28 7. a= 30 8. a=3

構造の見方|何が変わらないかを先に見る

取り出した量も加えた量も同じ a g。だから総量300gは変わらない。
4%の食塩水 a g が、100%の食塩 a g に置き換わった。
食塩量は12gから36gに増えた。増加は24g。
1g置き換えるたびに0.96g増える。24 ÷ 0.96 = 25。

問題を整理する

まず、食塩水が何グラムできたかを確認する。

300g から a g 取り出し、食塩 a g を加えている。

食塩水の総量

取り出した後\(300 - a\) g
食塩を加えた後\((300 - a) + a = 300\) g

取り出した量と加えた量が同じ a だから、総量は300gのまま変わらない。

ここで注目したいのは、4%の食塩水 a g がなくなり、100%の食塩 a g が入ったという点だ。

取り出して加えるという操作はもう終わっている。手元にあるのは「(300−a)g の4%食塩水」と「ag の食塩」だけだ。

読み替え

この問題は、次のように読み替えられる。

4%の食塩水と食塩(100%)を合わせて、12%の食塩水300gを作った。食塩は何g使ったか。

取り出した手順も、同じ容器でのやりとりも、もう関係ない。4%の食塩水と食塩が手元にある。それだけ。

鶴亀算で解く(主役)

(エ)約40秒

もし全部4%の食塩水だったら、食塩は何gか。実際との差はどこから来るか。

鶴亀算型

変わらないもの総量 \(300\) g
全部4%なら食塩量 \(300 \times 0.04 = 12\) g
実際は12%なので食塩量 \(300 \times 0.12 = 36\) g
増えた食塩\(36 - 12 = 24\) g
1g置き換えると4%→100%で \(1 \times (1 - 0.04) = 0.96\) g 増える
置き換えた量\(0.96a = 24\) → \(a = 25\)

答え 5.

方程式で解く

問題文に素直な式はこれだ。

分母は食塩水の総量、分子は食塩の量。

方程式

立式\(\dfrac{0.04(300-a)+a}{300-a+a}=0.12\)
分母を整理\(\dfrac{0.04(300-a)+a}{300}=0.12\)
両辺×300\(12 - 0.04a + a = 36\)
整理\(0.96a = 24\) → \(a = 25\)

方程式は正確だが、立式前に迷いやすい

一元一次方程式なので計算自体は簡単だ。しかし同じ a が「取り出す量」「加える量」「残った食塩水の量」として式のあちこちに出てくる。立式までの認知負荷が低くない。

天秤法でも解ける

読み替えが完了していれば、4%と100%を天秤にかけることができる。

天秤法

支点12%
低い側の腕\(12 - 4 = 8\)
高い側の腕\(100 - 12 = 88\)
重さの比\(4\%側:100\%側 = 88:8 = 11:1\)
合計12個分が300g\(300 \div 12 = 25\) → \(a = 25\)

天秤法は速いが、読み替えが前提

問題文には「取り出してから食塩を加えた」と書いてある。天秤に乗せるには、この操作を消して最終状態だけを見直す必要がある。「取り出した残像」と「混ぜた幻覚」が、天秤図を見えにくくする。読み替えができれば速い。

この問題で本当に見るべき三つ

構造を見る三つの問い

  • 何が変わらないか → 総量300g
  • 何が変わったか → 食塩量が12gから36gに(24g増加)
  • 何と何の差が効いているか → 4%と100%の濃度差96%

この三つが見えた瞬間、鶴亀算の枠が自然にはまる。

解法を知っていることと、解法が見えることは違う。北川式では、問題文を削り、構造を露出させてから解法を選ぶ。

選択肢がある場合の確認

概算で候補の見当をつけ、構造に合うか確認すれば十分だ。鶴亀算で25gと出たら、選択肢5(a=25)で確かめる。

a = 25 の確認(30秒)

取り出した食塩\(25 \times 0.04 = 1\) g 減る
加えた食塩\(25\) g 増える
差し引き\(25 - 1 = 24\) g 増加
最終食塩量\(12 + 24 = 36\) g → \(300\)g の \(12\%\) ✓
北川式の考え方 単元名ではなく構造で解く 食塩水に隠れた鶴亀算型の問題 → この問題を題材にした詳しい考え方

解説者

北川誠二

個別指導塾TOMAS現役講師・北川塾主宰・認定心理士

中学受験4教科と中学国語・数学を指導。中受算数で培った比と面積の感覚、国語・数学を同時に指導することで見えてきた「問題文読解と数学得点の直結」を解説に活かす。解法のパターン化・ルーチン化は認知科学のチャンク化・手続き記憶の概念と直結しており、認定心理士としての知見がこのアプローチの背景にある。

著者プロフィール・教育理念 →