なぜ起きるのか
本文を先に読むと、人は自然に物語を補完する。これは読解力が低いからではない。
人は物語を読むとき、書かれていることだけを読んでいるわけではない。登場人物の行動や発言から、
- きっとこう考えたのだろう
- こういう成長をしたのだろう
- この後はこうなるはずだ
と、自分なりに物語を完成させながら読んでいる。これは普段の読書では自然な行為であり、むしろ作品を深く味わうためには必要な力でもある。
しかし、国語の選択肢問題では、この働きが誤答の原因になることがある。
発生経路の例
例えば本文に、「来年こそは、彼の背中に追いついてみせる」と書かれていたとする。すると、物語補完バイアスは以下の経路で発生する。
バイアスの発生経路
本文の客観的事実は「来年こそは、彼の背中に追いついてみせる」だけである。そこから先は解釈であり、本文そのものではない。
「美しい物語への共鳴」「道徳的なことへの共感」が判断を曇らせるのである。
出題者はこの心理を利用する
出題者は、受験生が補完した物語と一致する選択肢をしばしば含める。その選択肢は「美しく、正しそう」に見えるからこそ強力な罠になる。正解はあくまで本文に書かれていることの最も正確な反映である。
よくある悩み
国語で主人公の気持ちを考えたのに間違えます
それは物語補完バイアスかもしれません。本文に書かれていることではなく、自分にとって自然な物語を自分で作り上げている状態です。
二択まで絞れるのに間違えてしまいます
本文そのものではなく、自分が頭の中で作った物語と選択肢が一致しているためです。これを物語補完バイアスと呼びます。
本文を読んでいるのに国語の点数が上がりません
読んでいないのではなく、読みながら物語を完成させてしまっている可能性があります。テストで問われるのは補完した物語ではなく本文の記述です。
登場人物の気持ちはわかるのに、なぜか選択肢が合いません
気持ちを理解するあまり、本文に書いていないことまで想像してしまうからです。これを物語補完バイアスと呼びます。
なぜ出題者はこんな選択肢を作るのですか
受験生が自然に補完する物語を利用して誤答を誘導するためです。作品を鑑賞できる生徒がはまりやすい罠です。